ネゴシエーター

Metro
1997年,アメリカ,117分
監督:トーマス・カーター
脚本:ランディ・フェルドマン
撮影:フレッド・マーフィー
音楽:スティーヴ・ポーカロー
出演:エディ・マーフィー、マイケル・ラパポート、マイケル・ウィンコット、キム・ミヨリ

 犯人と交渉することを専門的に担当する刑事ネゴシエーターのスコットは、人質を守るためなら犯人を撃ち殺すこともためらわない。一匹狼的に仕事こなすスコットに署長は元SWAT新人マコールを教育するように命ずる。新人教育といっても、それは常に現場で行われる…
 今ひとつ役に立たない、あるいは愛称の悪い相棒を持つのはエディ・マーフィーのひとつのパターン、しかも喋りが仕事のネゴシエーターということで、はまり役であることは間違いなく、全体にまっとうなアクションになっている。

 『48時間』『ビバリーヒルズ・コップ』という刑事ものをしっかりと踏襲して、普通に作られたアクション。それはつまり面白くはあるけれど、今までのものほどは面白くないということ。デビュー作といえる『48時間』の衝撃、『ビバリーヒルズ・コップ』の展開の新しさは望むべくもないが、それぞれの続編となら比べられるくらいの出来。エディー・マーフィーといえば、コメディアンなので、どうしても笑いの要素を求めてしまいがちだが、この映画は笑いをかなり抑え目にしている。しかも、スーパーマン的なキャラクターではなく、どこか間が抜けたような、人間らしい設定になっている。エディ・マーフィーというと喋りを中心にして周囲の人を圧倒するというキャラクターが多いのに、ここではそうではない。それで特別面白くなっているというわけではないけれど。
 やはり、エディ・マーフィーは昔のほうが面白かった。上の2つ以外でも『大逆転』『星の王子』なんかは面白い。しかし、はずれも多く、『ゴールデン・チャイルド』『ハーレム・ナイト』『ブーメラン』あたりは目も当てられない。などといいつつ、これだけの作品を見ているので、わたしはエディ・マーフィーが好きらしい。最近は『ナッティ・プロフェッサー』と『ドリトル』といったファミリー向けコメディに力を入れているのはきっと子供がかわいいのでしょう。
 エディ・マーフィーを見るならやっぱり『ビバリーヒルズ・コップ』。この映画はそれを思い出させてくれる映画でした。

ドクター・ドリトル

Dr. Dolittle
1998年,アメリカ,84分
監督:ベティ・トーマス
原作:ヒュー・ロフティング
脚本:ナット・モールディン、ラリー・レヴィン
撮影:ラッセル・ボイド
音楽:リチャード・ギブス
出演:エディ・マーフィ、オシー・デイヴィス、オリヴァー・プラット、ピーター・ボイル、リチャード・シフ

 子供のころ、飼っている犬と会話をしているところを父に咎められ、犬と引き離されてしまった経験を持つジョン・ドリトルは優秀な医師となっていた。友人と共同経営する委員の合併問題が持ち上がるころ、家庭では娘のマヤが動物に非常な興味を持つようになっていた。そんな時、ジョンは動物の言っていることを理解する能力を取り戻すのだが…
 1967年にも映画化されたことのある名作児童小説の映画化。今回はストーリーも大きく変えて、舞台は現代にして、コメディ映画に仕上げた。しかし、家族というテーマをかなり大きく出している。
 とりあえず、動物たちとドクター・ドリトルのやりとりが面白い。ファミリー向けには非常にいい映画でしょう。子供の頃、原作の小説が大好きだったんですが、そのイメージを壊すこともなく、しかしまったく違う話として作っているので、好感がもてました。 

 一言で言えば、面白いが、新鮮味はない。エディ・マーフィーでなくても別に良かった。動物が喋っているところ(CG)はかなりうまくできているが、ベイブに先を越されている。と、誉めているようには聞こえませんが、ファミリー向け映画としてみるなら、これでいいでしょう。
 映画を娯楽としてみるならば、ある程度対象を絞ってゆくことが必要であって、必ずしも一般論で映画をきってしまうことがいいとは言えないということでしょう。この映画はいわゆる(芸術としての)映画的な価値から言えば、ほとんど価値がない。なぜなら、新しいところがどこにもないから。何か新しいことを表現しているわけではないから。
 この映画が表現しようとしているのは家族(特に父と子)の問題や、動物や命の大切さ、拝金主義の否定などでしょう。このようなメッセージをコメディという形にくるんで提示すること。今まで幾度となく繰り返されてきたことですが、これはこれでいいということでしょう。