グレンとグレンダ

Glen or Glenda
1953年,アメリカ,67分
監督:エドワード・D・ウッド・Jr
脚本:エドワード・D・ウッド・Jr
撮影:ウィリアム・C・トンプソン
音楽:サンドフォード・ディキンソン
出演:ダニエル・デイヴィス(エド・ウッド)、ドロレス・フラー、ライル・タルボット、ベラ・ルゴシ

 意味不明な実験シーンから始まるこの映画の中心となるのはグレンという服装倒錯者の話。女装趣味なだけでちゃんとした婚約者もいるグレンが悩む姿を描いている。
 しかしそこは「史上最低の映画監督」と呼ばれるエド・ウッド。物語の筋と何の関係があるのかわからないベラ・ルゴシをストーリー・テラーに使い、さらに医者に物語を話させるという不可解な3重構造をとる。このわけのわからなさは面白いが、見るに耐えないという人の方が多いと思う。

 さすがにこれはひどい。まず本題に入るまでに15分くらいかかるというのがすごい。それまではほぼ不必要といっていい導入部がだらだらと続く。そして途中にいったい物語にどんな関係があるのかというようなお色気シーンがたっぷり5分ほども挿入される。
 そういうプロットのまどろっこしさがねければ、相当に面白いB級映画になるのだけれど、それにすらなれないところがやはり「史上最低」なのだろうか。
 エド・ウッドといえば安っぽい作りで有名だが、この映画もその例に漏れず、全くお金がかかっていない。刑事と医者が話す場面はみえみえのセットで、2つの角度からしか撮影できないらしい。ベラ・ルゴシがいる部屋の後ろにあるおどろおどろしさを出そうとしているぬいぐるみも変。そして戦争シーンは明らかにどこかの記録フィルムの流用。全く同じシーンを繰り返し使う。そして役者が下手。などなど恐ろしいほどの安っぽさ。
 この安っぽさ自体は好きですけどね。安っぽさを前面に押し出して勢いで乗り切ってくれれば面白いのにね。
 そしてジェンダー的にも、「昔はこうだったのね」と思う意外、とくに考察に値するほどのものもありません。
 そこまで言いながらも、一度見てみる価値はある。と思う…