プリースト判事

Judge Priest
1934年,アメリカ,79分
監督:ジョン・フォード
原作:アーヴィン・S・コップ
脚本:ダドリー・ニコルズ、ラマー・トロッティ
撮影:ジョージ・シュナイダーマン
音楽:シリル・モックリッジ
出演:ウィル・ロジャース、ハティ・マクダニエル、トム・ブラウン、フランシス・フォード

 時代は19世紀末、南部の町で巡回裁判所の判事をしているプリースト。田舎町に大した事件はなく、彼に対して敵愾心を燃やす上院議員のメイドゥーとの小さな戦いと、ロースクールを卒業したばかりの甥っ子ジェロームの恋の話があるばかりだった。
 まさに古きよきアメリカ。のどかな雰囲気の中に適度な笑いと適度なサスペンスと適度にハートウォーミングがちりばめられた味わい深いヒューマンドラマ。

 こういうのはとてもいいですね。なんとなく自分自身の気分にあったと言うことなのだろうけれど、すごくこころにすっと入ってくる感じ。大体想像はつく物語ではあるのだけれど、なんといってもプリースト判事のキャラクターが秀逸で、会っただけで誰もがほっと肩をなでおろしてしまいそうなあたたかさがにじみ出ているようなのでした。
 ジョン・フォード自身とアメリカの観客もこの雰囲気を気に入ったのか、フォードは南部を舞台に同じウィル・ロジャース主演でさらに2本の映画を撮ったらしい(1本が「周遊する蒸気船」であることは確認。もう一本は未確認)。
 もう一ついいのはプリーストのところにいる二人の黒人。もちろんこれはプリーストが反差別主義であることを示すためのものだけれど(実際はいまから見れば十分に差別的なのだけれど、これが30年代の映画であることを考えると仕方がないといっていいと思う)、この二人がもたらす陽気さと音楽は単純な古きよきアメリカ映画とは違うアクセントになっていていい。とはいえ、基本的にはホームドラマ的な映画なのですがね。
 きのうの「暗黒街の弾痕」の完璧さと比べるとかなりすきだらけの映画ですが、私には(とりあえずいまの私には)、こっちの作品の方がヒットしました。多くの人は「暗黒街」の方に軍配を上げると思いますが… とにかく、ハリウッド黄金期というのはやはり本当に黄金期だったのね、と思うわざるをえない作品のバリエーションがそこにはあります。