クリミナル・ラヴァーズ

Les Amants Crimineles
1999年,フランス=日本,95分
監督:フランソワ・オゾン
脚本:フランソワ・オゾン
撮影:ピエール・ストーベ
音楽:フィリップ・ロンビ
出演:ナターシャ・レニエ、ジェレミー・レニエ、ミキ・マノイロヴィッチ

 高校生のアリスがボーイフレンドのリュックと夜の学校に現れる。アリスはシャワー室でシャワーを浴びるサイードに近づく。サイードはアリスと寝たがっていた。彼を誘惑し、シャワー室に横たわるアリス。サイードがアリスに覆いかぶさったところに、ナイフを持ったリュックが忍び寄る…
 独特の感性で作品を作るオゾン監督のクリミナル・ドラマ。物語は当初の軌道からはずれ、迷走してゆく。

 結果的には「何じゃそりゃ!?」という話なのだけれど、その話の展開は魅力的で、どうしてこうなるのかというわけがわからないにもかかわらず、先の展開は気になるばかり。いろいろ大変なことが起こるのだけれど、その原因というか動機はひどく些細なものばかり。あるいは明らかにされもしない。
 そして、映画が終わってみると、その始まりと終わりっではまったく異なる世界がそこにある。時間軸に沿って進むドラマとアリスの日記を基に構成される事件の事実。時間軸に沿って進むドラマがその事件から派生した軌道から大きくずれてしまっているだけに、そこにはひどい齟齬が生じる。そのとき、アリスの世界とリュックと小屋の男の世界との間には何らかの乖離が生じている。展開してゆく(あるいは変化してゆく)その3人の関係性と、明らかになってゆくアリスとリュックとサイードの3人の関係性。映画が終わり、それらの関係性に結末がつけられたとき残るのは、彼らの感情に触れてしまったようなぬるりとした不思議な感触。そこにあるのは観客としての自分は疎外された世界。
 この映画のつくりはどの登場人物の心情もつまびらかにしないものになっている。したがってみる側は自分の位置に悩む。もっとも自己を投入しやすそうなリュックに肩入れしてみてみても、リュックの心情や感情は明らかにされず、結局は疎外され、途方にくれる。
 物語は見ている側をひきつけるにもかかわらず、そこに登場する人々は見ているものを寄せ付けない。しかし終わってみると彼らのぬるりとした感情に触れたような感覚も残る。
 という不思議な映画。