ひかりのまち
Wonderland
1999年,イギリス,109分
監督:マイケル・ウィンターボトム
脚本:ローレンス・コリアト
撮影:ショーン・ボビット
音楽:マイケル・ナイマン
出演:シャーリー・ヘンダースン、ジナ・マッキー、モリー・パーカー、イアン・ハート、ジョン・シム、スチュアート・タウンゼント
ロンドンの小さなカフェで働くナディアは伝言ダイヤルで恋人を募集。姉のデビーは息子のジャックと二人暮し、妹のモリーはもうすぐ子供が出来る。三人姉妹の母親は父親が家でぶらぶらしていることにストレスを募らせ、家を出てしまった末の息子ダレンのことを心配する。
ロンドンでばらばらに暮らす家族のそれぞれの4日間を描いた物語。
ヒューマニックな話だが、ウィンターボトムらしいひねりの聞いた筋と画素の荒い手持ちカメラを多用した映像がハリウッド的ハートウォーミング・ムーヴィーとは一線を画している。
それぞれのキャラクターの個性がはっきりしていて、物語としては非常によく出来た映画だと思う。
家族のそれぞれがばらばらに登場し、それぞれの悩みを抱え、しかし微妙に係わり合いながら、日常的ではあるけれど激動の4日間を過ごす。
物語と脚本には非常に好感が持てた。「家族」というものを前面に打ち出すわけではなく、話が完全に収斂していくわけでもない。しかし、それぞれがそれぞれなりに問題を消化し、家族それぞれを決しておろそかにはしない。非常にリアルな物語に思えた。あるいはリアルなものを凝縮した感じとでも言おうか、とにかく「生」な感じがして非常によかった。
ウィンターボトムという監督はいつも映像にかなり凝っていて、今回もさまざまなこだわりが感じられる。一つはもちろんもっとも目に付く画素の荒さ。これは恐らく証明を弱くしてカメラの感度を上げているのだろうけれど、なんとなくビデオカメラのような映像になる。特に夜の場面では家庭用ビデオカメラのような感じになる。もう一つの特徴は手持ち撮影の多用。特に歩いている人を近く(主に後)から手持ちカメラで追いかける映像が多かった。
この映像がもたらす効果は素人っぽさであり、真実みであるのだろう。簡単に言えば「ブレア・ウィッチ」のような素人が記録したフィルムという設定にふさわしい映像の作り方。しかし、この映画ではその造り手の側にはまったく言及しておらず、映画の外に存在していることは明らかだ。ならどうしてこんな撮り方を、と思うけれど、簡単に言ってしまえばリアルさを追求しているんだろう。作り物ではない本当のドラマのように見せたいということ。現実を切り取ったもののように見せたいということ。それだけだと思いますが。
非常によくまとまった映画だと思います。まとまりすぎていてもうちょっと壊してくれたほうがよかったという気がするくらいきれいにまとまった映画。それでも結構感動も出来るという映画です。