ターミネーター2 特別編

Terminator 2: Judgement Day
1991年,アメリカ,153分
監督:ジェームズ・キャメロン
脚本:ジェームズ・キャメロン、ウィリアム・ウィッシャー
撮影:アダム・グリーンバーグ
音楽:ブラッド・フィーデル
出演:アーノルド・シュワルツェネッガー、リンダ・ハミルトン、エドワード・ファーロング、ロバート・エリック、ジョー・モートン

 あのターミネーターが再び現代に現れた。前作でターミネーターと対決したリンダの息子ジョンは里親に預けられ、リンダ自身は精神病院に収容されていた。ジョンを探し出そうとするターミネーターに対し、もう1人未来からやってきた男がいた…
 世界的ヒットとなった「ターミネーター2」の特別編で、1分ほど長いバージョン。いわゆるディレクターズカットで、オリジナルのアクション重視に対して物語的に重要と思われる場面が追加されている。

 何度見たか知れない映画ですが、久しぶりに見ると、この映画の面白さは「笑い」の部分にあるのだと感じます。ターミネーターのおかしさを笑う。その人間として未熟なサイボーグという描き方は、あくまで人間にとってロボットというのは自分より低い位置にあるものでしかないということをいみし、大量殺人を行うことができるターミネーターであっても、自分に従うものであればペットの一種でしかないということになるのでしょう。そこから生じる笑いは子供や動物を使った笑いと同種のもので、それを見た目のごついターミネーターがやるところが面白いということでしょう。
 ほかにもアクションとか書けることは多いはずですが、いまさらというきもするので、話を飛躍しましょう。

突然始まる単発コーナー
 日々是映画の「映画は科学する」第1回 タイムマシーンは戻れない

 ターミネーターの謎は、タイムトラベルというところにある。ターミネーターを生むことになるサイバーネットが存在するのはターミネーターが存在していたからだという「卵が先か鶏が先か」的な議論は絶対的に解明することはできない。それは、ターミネーターが存在しなければターミネーターは存在しないという循環論理を含むからである。
 では、なぜこういうことがおきるのか考えてみた。その鍵は「未来は変化する」という考え方の問題にあるだろう。未来が変化するというのは世界を4次元に切り取った場合に、時間軸上の1点を変化させることで、その時間軸上の先の点が変化するという意味である。つまり、現在(点p)から未来(点q)へと進むはずだったものが、別の未来(点q’)へと進むということである。問題となるのは、このとき点qと点q’は根本的に異なる点であって、qがq’に変化したわけではないということである。4次元空間では1つの時点について点は1点しか存在しないためそれは変化し得ない。それは2次元上の1点が変質できないのと同様である。 したがって、同一時点で何らかの変化が生じる場合は5次元空間を想定する必要が出てくるだろう。それはイメージ化するならば、1つの瞬間(3次元空間)をひとつの点と考え、それに対して時間軸と事象平面を想定するというものである。この事象平面というのは(私の勝手な造語ですが)ある時点においてありうべき事象をプロットした平面である。このような5次元空間を想定するとしたならば、われわれが「時間」と考えているものは、過去の1点から現在の1点、さらに未来の1点を結ぶ直線であると考えられる。
 このときわれわれが「未来」と呼ぶものは過去から現在を結んだ直線をそのベクトルにしたがって延長したものであり、その時点での必然的な未来であるわけだ。しかし、現在に対して何らかの力によって別方向のベクトル力が加えられると、未来に向けたベクトルが変化する。そのような変化が起こると過去から未来へと至る直線は現在で折れ曲がり、別の未来へと向かう新たな直線が現れるのである。
 これをターミネーターに当てはめてみると、ダイソンを説得して、サイバーネットの開発をやめさせたということはひとつのベクトル力であり、それによってそれまで必然的な未来であったターミネーターがやってきた未来にはたどり着かないということになる。
 もし、タイムマシーンが直線的な(4次元的な)時間移動しかできないとしたならば、過去へとやってきたタイムマシーンはそれだけで一種のベクトル力となり、その現在が向かう未来はそのタイムマシーンがやってきた未来とは異なる未来となってしまう。したがって、そのタイムマシーンがやってきた時点へと戻ったとしても、そこに現れるのはそれまでいた未来とは異なる未来でなければならない。
 だから、「タイムマシーンは戻れない」。タイムマシーンが戻るためならば、時間軸と同時に事象平面でも移動できる(5次元的な)時間移動ができなければならない。
 話が長くなってしまいましたが、「ターミネーター」でポイントとなっているひとつの言葉「未来は自分で決めるもだ」というのは100%真実であるということがいえるのである。