日本人の勲章
Bad Day at Black Rock
1955年,アメリカ,81分
監督:ジョン・スタージェス
原作:ハワード・ブレスリン
脚本:ミラード・カウフマン、ドン・マクガイア
撮影:ウィリアム・C・メラー
音楽:アンドレ・プレヴィン
出演:スペンサー・トレイシー、ロバート・ライアン、リー・マーヴィン、ディーン・ジャガー
第二次世界大戦直後の西部を舞台としたサスペンス。大陸横断鉄道(多分)が4年ぶりに小さな街ブラック・ロックに停車する。電車から降り立ったマクフィーリーは住民に冷たくあしらわれる。最初は不審に思っただけだったが、目的であったアドビ・フラットに行くと、そこは……
西部劇とヒッチコック風のサスペンスをミックスして、社会派の味わいを添えたスタージェスのハードボイルドな作品。なぜこんな邦題なのかは、映画を見ているうちに明らかに。
55年といえば、ヌーヴェル・バーグなどの新しい潮流が起こる直前の時期。アメリカではこんな不思議な映画が撮られていた。日本人移民に対する差別問題を告発するという貴重な試みをしていながら、全体に漂う雰囲気は西部劇、勧善懲悪の世界。差別問題を真っ向から扱うのをためらったのだろうか?それとも、プロットを組み立てる方法論として、このような典型的な方法しか取れなかったのだろうか?
と、いうのも、このような勧善懲悪の方法をとってしまうと、悪人(=スミス)が日本人嫌いだから、日本人を殺した。(つまり、個人的な好みの問題)ということになってしまって、差別問題が隠蔽されてしまう恐れがあると思えるからだ。それでも、その点を指摘したというだけで意義のある映画だと思うが、結局この映画の見せ場は、片腕のスペンサー・トレイシーのかっこいい立ち回り(空手+合気道?)なんでしょうかね。
娯楽としての映画と思想としての映画の狭間で苦悩する映画製作者の姿が垣間見えたような気がした一作。