Bandits
1997年,ドイツ,109分
監督:カティア・フォン・ガルニエル
脚本:ウーベ・ヴィルヘルム、カティア・フォン・ガルニエル
撮影:トルステン・ブリュワー
音楽:バンディッツ
出演:カティア・リーマン、ヤスミン・タバタバイ、ニコレッテ・クレビッツ、ユッタ・ホフマン、ハンネス・イーニッケ

 1999年には「ラン・ローラ・ラン」、「ノッキン・オン・へヴンズドア」など、新しいタイプのドイツ映画が数多く上映されたが、これはその先駆けとなった作品。囚人の女性バンド「バンディッツ」が警察のパーティーに演奏しに向かう途中で脱走を図り、脱走中の模様がテレビで放送されると、CDもベストセラーになり……
 とにかく、ハチャメチャな映画。MTVのようでもあり、香港映画のようでもある。ストーリーはそれほど練ったものではないが、展開にはメリハリがある。バンディッツのそれぞれのキャラクターが非常に魅力的なのが、この映画の成功の秘密だろうと思う。

 ハチャメチャさと思い切りとキャラクターの個性がこの映画の魅力。
 何がハチャメチャかといえば、ひとつは各場面のつくりがハチャメチャ。道路でファンに囲まれ、なぜかみんなで踊り始める場面、マサラムービーかおまえは!と、突っ込みたくなってしまうハチャメチャさ。
 思い切りというのは、モンタージュの仕方。普通に考えればストーリーをつなぐために必要なはずのディテイルを思い切って省いてしまって、躍動感のある展開を可能にしている。逆にいえばストーリーが隙だらけなのだけれど(簡単に言ってしまえば、あんな方法で逃げつづけられるはずがない。警部がよっぽどのバカか、ドイツ警察がひどい人手不足だ)、必要な説明を映画に盛り込むかどうかは映画全体の構成を決める大きな要素なのだ。普通に考えれば必要だと思える断片を思い切ってカットしてしまうことによって、その監督の個性が映画に反映され、独特なものを作り上げることができるようになるのだ。
 少しわかりにくい説明になってしまったが、この監督の特徴的なモンタージュの仕方は「時間の混合」ではないだろうか。特徴的なのは、ルナとウェストのラヴシーン。話をしているシーンとセックスシーンが交互に挿入されてふたつの時間が混合された形でシーンが構成されている。これは、最後の場面(観客のところへ飛び込むシーンと船へと走っていくシーンを混合した場面)でもまったく同じ構成の仕方がされている。そして、たびたび画面の中に入れ込まれるミュージックビデオの映像も現在の時間に過去の時間を割り込ませることで同様の効果を生み出しているといえる。
 これらの手法は決して目新しいものではないけれど、この映画のなかではかなり効果的に使われているといえるのではないだろうか。

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