1996年,日本,80分
監督:青山真治
脚本:青山真治
撮影:田中正毅
音楽:青山真治、山田功
出演:浅野忠信、光石研、辻香緒里、斎藤陽一郎

 浅野忠信の主演第一作にして、青山真治監督第一作。出所したばかりのヤクザ松村(光石研)と幼馴染の健次(浅野忠信)。松村と組長、健次と父親の関係を軸として物語りは展開するが、フラストレーションと怒り、いいようのないイライラが映画全体に満ちる。
 田舎ののどかな風景という静謐さの中に言葉にならないイライラがうまく表現されている。

 映像は澄んでいて、音楽もさりげなく、登場人物の心理の描き方もすばらしい。しかし、全体的に少しリアリティに欠けるという気がする。最初に松村が銃を撃つときの音もそうだし、病院で白昼どうどう首吊り自殺をするというのもありえそうにない。
 映画におけるリアリティとは、必ずしも現実におけるリアリティと同じものではなくて、そもそも虚構として作られて映画において説得力を持つものが映画におけるリアリティを持つということになる。つまり、もし本当はこの映画の銃の音が他の映画の派手な音より現実の銃の音に近いのだとしても、そのことは映画におけるリアリティは生まないということだ。観衆にとってはうその派手な銃声のほうがよりリアルな銃声であるのだ。
 そのような違和感をこの映画を見ながら所々で感じてしまったのが残念だった。

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