The Cider House Rules
1999年,アメリカ,126分
監督:ラッセ・ハルストロム
原作:ジョン・アーヴィング
脚色:ジョン・アーヴィング
撮影:オリヴァー・ステイブルトン
音楽:レイチェル・ポートマン
出演:トビー・マグワイア、シャーリーズ・セロン、マイケル・ケイン、デルロイ・リンド、エリカ・バドゥ

 アメリカ文学界の巨匠ジョン・アーヴィングが自ら脚色し、「ギルバート・グレイプ」のラッセ・ハルストロムが監督した心温まる物語。
 セント・クラウズという田舎の孤児院で生まれ育ったホーマーは青年となり、自らの未来に疑問を持ち始める。彼が父親代わりの医師ドクター・ラーチをはじめとした人々との係わり合いの中で人間的に成長してゆく物語。
 物語が非常に素直に構成され、映像も素朴に美しく、単純に感動できる。なんだか誉めているように聞こえませんが、本当に映像も出てくる人々も暖かく美しく、見るとなんだか幸せになれる。ラストシーン近くになると周りからすすり泣く声も聞こえてきた。
 ラッセ・ハルストロムは「やかまし村の子供たち」でメジャーになっただけに、子供を扱うのがうまいし、いわゆる文学的な作品を撮るのがうまい。子供の撮り方がわざとらしくないし、時代設定を第二次大戦直後としているところもうまくはまっている。映像も、古典的な撮り方(たとえばひとつばらすと、旅立ちのシーンで、上からの画で、車が画面の下から奥へと走ってゆく、というカットがあるけれど、これは「旅立ち」という意味を比喩的に表現する古典的な方法である)をしているが、躍動感がある。
 とにかく、うまくまとまっていて、単純に感動できる映画。

 この映画の感動させる力とはなんだろうか?青年ホーマーの心の純粋さ。周りの人々の素朴な人間性。世の中こんなに善人ばかりじゃない!というのが今の世の中なのだし、映画もそのような世の中を切り取って描くことが一般的ではあるけれど、映画という虚構の世界ではこのような世界観も許されるということが実感される。
 映像は美しいがこれといった特別な工夫もなく見える。登場する人々の演技も特に素晴らしいというわけではない。しかし、これだけ出演者たちを素朴に見せるということはその裏に緻密な演出の技量が隠されている。子供を撮るのがうまい監督に共通するのはその子供を自然に素朴に見せるという力量。このラッセ・ハルストロムとアッバス・キアロスタミがそのような子供の演出に特に秀でていると思う。

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