Onegin
1999年,イギリス,106分
監督:マーサ・ファインズ
原作:アレクサンドル・プーシキン
脚本:マイケル・イグラティフ、ピーター・エテッドギー
撮影:レミ・アデファラシン
音楽:マグナス・ファインズ
出演:レイフ・ファインズ、リヴ・タイラー、トビー・スティーヴンス、レナ・へディ、マーティン・ドノヴァン

 19世紀初頭のロシア、ペテルブルクに住む貴族のエヴゲニー・オネーギンは伯父を看取りに田舎の屋敷へと向かう。彼は社交界の虚栄に飽き飽きし、今のままの生活に疑問を覚えていた。そして、伯父の遺産である田舎の屋敷にしばらくとどまることに決めたが、そこに明確な目標があるわけでもなく、友人になった青年地主のレンスキーと漫然と時を過ごしていた。
 そんなオネーギンの恋愛物語。プーシキンの原作を主演のレイフ・ファインズの妹のマーサ・ファインズが映画化。初監督作品ながら、その組み立てには類まれなセンスが感じられる。

 この映画の最大の強みは物語(つまり原作)であることは確か。しかし、それを丹念にスクリーンに映し込んだ監督の力量もかなりのものだと思う。丁寧に丁寧に映像を重ね、映画を作り込んでいったという感のある作品で、きっちりと無駄が省かれているところに好感が持てる。
 少々クローズアップが多いのが気になったが、それ以外では、余計な説明的な映像やセリフや独白が省かれ、映像に語らせることに成功していると思う。そして、物語の展開も、ついつい語ってしまいたくなる部分、説明してしまいたくなる部分がばっさり切られ(たとえば、オネーギンの以前の生活、レンスキーが死んでからのこと、ラストシーン位後のこと)、映画全体がスリムになった感じがする。そう、最近の映画はこういった思いきりというか、我慢というか、「思い切って切ってしまうこと=語るのを我慢すること」が足りない気がする。だから、だらだらと長い映画が多くなって、2時間半も3時間も映画が続き、「まだまだ切れるんじゃないの?」という疑問だけが頭に残るという事態になってしまう。映像のセンスとか、そういったものはたいしたことない(といっては失礼か)のだけれど、この監督は映画の作り方がわかっている監督なのではないかと思いました。

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