Ukamau
1966年,ボリビア,75分
監督:ホルヘ・サンヒネス
脚本:オスカル・ソリア、ホルヘ・サンヒネス、ヘスス・ウルサガス
撮影:ウーゴ・ロンカル、ヘナロ・サンヒネス
音楽:アルベルト・ビヤルパンド
出演:ネストル・ペレド、ベネディクタ・メンドサ、太陽の島に生活する農民

 インカの民の発祥の地であるチチカカ湖の太陽の島。ここで暮らす農民のマイタは畑で出来た作物を売りに舟で町の市場に出かけた。マイタの妻サビナはマイタの留守中も畑に出て働いていた。サビナが畑から家に戻ると、そこにはマイタをたずねて来た仲買人のラモスがいた。ラモスはサビナを強姦し、ついには殺してしまう…
 ウカマウ集団が「ウカマウ」と名付けられる元になった長編第一作。ボリビアの映画史上でも初の長編映画で、ボリビア大衆に熱狂的に迎えられた。素人であるインディオたちが自分の言葉でしゃべるというスタンスはこのころから現在まで変わることはない。

 ウカマウにとってもボリビアにとっても初めての長編映画。ボリビアという国で初の長編映画というのはかなりすごいことである気もするが、それはやはり、映画という産業がアメリカを中心とする先進国に握られてきたものだということを意味するのだろう。そんな、先進国特にアメリカ(「第一の敵」)のものである映画という手段を自分の側に取り込むこと。このことには大きな意味があったのだろう。彼らが一貫して問いかけ続ける反帝国主義、反アメリカというものが姿勢としてあるのだろう。
 しかし、この映画自体は、白人領主(つまり植民者=コロナイザー)の暴虐を描いたもので、ボリビア国内の問題として描いている。そして、インディオが住む土地がインカ発祥の地であり、インカの聖地である太陽の島だということがわかりやすく、西洋文明と土着の文明の対立構造を浮き彫りにする。
 はっきりいってしまえば、単純な抵抗映画。題材自体は映画に限らず小説などでも繰り返し描かれてきたことであり、それほど真新しいものではない。映画としても画期的な手法が取り入れられているわけではない。むしろ、最近のウカマウの映画と比べると西洋の模倣や稚拙な面が目に付く。
 しかし、それでも、この映画は見る機会があったら必ず見なければならない映画でもあるのだ。ひとつの国で映画が生まれた瞬間。その瞬間を刻んだ映画なのです。

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