Le Petit Vouleur
1998年,フランス,63分
監督:エリック・ゾンカ
脚本:エリック・ゾンカ、ヴィルジニー・ヴァゴン
撮影:ピエール・ミロン
音楽:ジャン=ジャック・フェラン
出演:ニコラ・デュヴォシェル、エミリー・ラファルジェ、ジャン=ジェローム・エスポジト、ジョー・プレスティア

 オルレアンのパン屋で働く18歳のSは代わり映えのしない日常に苛立ちを募らせ、遅刻を繰り返したためにパン屋をクビになる。その夜恋人のアパートに泊まったSは恋人の給料を盗み、マルセイユへ向かった。そこでボクシングジムを経営するギャングの仲間になり悪事に手を染めていった。
 「天使が見た夢」が話題を呼んだエリック・ゾンカの監督第2作。いわゆるギャング映画ではなく、少しノワールな青春映画。

 誰もが感じるある種の閉塞感を映像化したというイメージの作品。Sがいらだち、いきがっているだけだということが最初のあたりで何とはなしに明らかにされる。これがこの監督のやさしさか。実際のところSはかなり卑怯なことをし、悪事をやることにそれほど躊躇を覚えないようなのだが、それがSの本質ではないことは最初の設定でわかっているから、安心してみていられる。
 だから全体としては暖かな雰囲気の映画で、ギャングを扱った映画だという緊迫感は皆無。この映画はギャング映画ではなくて青春映画だからそれでいいのだけれど。
 だからかどうかはわかりませんが、画面も全体に明るい。
 いい映画なんですが、なんとなくどっちつかずというか、とらえどころがないというか、漠然としていて明確な何かがないという感じはしました。でもそれは複雑なもの(言ってしまえばSの「心」)を複雑なまま包み込んでいると解釈することも出来るので、それが一概に「浅い」ということも出来ないのでもありますが…

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