Der Scharlachirote Buchstabe
1972年,西ドイツ=スペイン,90分
監督:ヴィム・ヴェンダース
原作:ナサニエル・ホーソン
脚本:ヴィム・ヴェンダース、ベルナルド・フェルナンデス
撮影:ロビー・ミューラー
音楽:ユルゲン・クナイパー
出演:センタ・バーガー、ハンス・クリスチャン・ブレヒ、イエラ・ロットランダー、アンヘル・アルバレス
開拓期のアメリカ、原住民のガイドを連れ、セイラムという町を探してやってきたロジャーは街に着くなり、教会の前で裁判が開かれているのを目にする。その裁判はへスター・プリンの姦通の罪を裁き、相手を白状させようとする裁判だった。裁判中のへスターに近づき、意味ありげにヘスターに目配せをするロジャー、そのとき牧師が急に倒れた。
ホーソンの緋文字をヴェンダースが映画化。ヴェンダースとしては最初で(今のところ)最後の歴史もの。違和感はあるがそれでも舞台にアメリカを選ぶあたりはヴェンダースらしさか。
ヴェンダースの退屈さが、マイナスの方に働いてしまったかもしれない。映画自体は紛れもなくヴェンダース。回り道をしながら映像美を足がかりにゆるゆると進んでいくヴェンダースらしさ。映像美と単純に言い尽くせない映像の味をこの映画でもしっかりとこめている。
この映画が撮られたのは「都会のアリス」から始まるロードムーヴィー3部作(って勝手に呼んでる)の直前。「ゴールキーパーの不安」で評価を得た直後に撮られている。こう考えていくとこの映画がヴェンダースの自由な意思によって撮られたのかということに疑問を感じてしまう。ヴェンダースという監督は結構人に頼まれた仕事をほいほいこなす監督のようで、最近の「ブエナ・ビスタ」しかり、「リスボン物語」しかりである。
で、この映画がたとえ何らかの商業的な意図のものに作られたものであってもそれがそのまま映画としての価値をうんぬんということにはならないのだけれど、なんとなくこの映画には不自由な感じがしたので、そのようなうがった見方をしてしまうわけです。
でももしかしたら、何度か見たら好きになっていくような気もする映画なんですね。最近のヴェンダースのパッとみのよさとは違う、退屈なんだけれどなんだかひきつけられる力のようなものがある気がする。「まわり道」あたりが生まれる要素になるようなものが。やはりそれは私がヴェンダースファンだからなのかしら。
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