Husbands
1970年,アメリカ,131分
監督:ジョン・カサヴェテス
脚本:ジョン・カサヴェテス
撮影:ヴィクター・J・ケンパー
音楽:ジャック・アッカーマン、スタンレー・ウィルソン
出演:ベン・ギャザラ、ピーター・フォーク、ジョン・カサヴェテス

 中年に差し掛かった4人の仲間、そのうちの1人が死ぬ。その葬式に駆けつけた3人の仲間たち。複雑な思いを抱えたまま葬儀場を後にした3人はのんだくれ、あてもなく彷徨い始める…
 ジョン・カサヴェテスがはじめて自分の監督作品に出演、いつもの出演者陣と息のあった演技を見せる。タイトルに「コメディ」とあるが、果たしてこれはコメディなのかどうなのか?

 いきなり、音楽+スチルの連続という破天荒な始まり方をするが、この表現は導入とて絶妙。そのスチルを見ているだけで、次につながる葬式がマッチョ気味のハゲ気味の男のものであることがすんなりと伝わってくる。そこに言葉による説明は要らない。わざとらしいフェードアウトやセピアの映像もいらない。淡々と続くスチルだけでそれを十分に語っている。そのあたりがまずカサヴェテスの型破りなところでしょう。そしてその後もフレーミングやピンとの合わせ方などカサヴェテスらしさ満載なわけです。
 そんな映像と物語があいまってこの映画は非常にイライラさせられます。身をかきむしりたくなるようなイライラ感。「一体こいつらは何がしたいんだ?一体こいつらは何がおかしくて笑っているんだ?」と始終思わずに入られない。彼らとともに笑うことはどうしてもできない。そんな笑えないコメディにこめられているのはもちろん彼ら自身のイライラ感。どうしようもないという感覚。何かが失われ、それによって生じる歪みをどうすることもできないという感覚。そのようなものなのでしょう。だから見ていて決して心地よくはなく、楽しくもないのです。しかし見ている者の何らかの感情を呼び起こせるということはその映画に一種の「面白さ」があることを意味するでしょう。私たちは大概「面白い」映画を見たいと思います。しかし、その「面白い」とは「楽しい」ということとはイコールではなく、悲しかったり怖かったり痛かったりするはずです。そんな「痛さ」=「面白さ」がこの映画にはあると思います。

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