A Beautiful Mind
2001年,アメリカ,134分
監督:ロン・ハワード
原作:シルヴィア・ネイサー
脚本:アキヴァ・ゴールズマン
撮影:ロジャー・ディーキンス
音楽:ジェームズ・ホーナー
出演:ラッセル・クロウ、エド・ハリス、ジェニファー・コネリー、アダム・ゴールドバーグ

 プリンストン大学に入学した天才数学者のジョン・ナッシュ。人付き合いの苦手な彼はルームメートのチャールズを最初は避けるが、チャールズの人柄もあって徐々に打ち解けてゆく。しかし彼の頭の中にあるのは「独特な、斬新な、この世のすべてを支配する心理」を見つけることだった。しかし、彼の奇異な行動は人々の笑いの種になり…
 実在の高名な数学者ジョン・ナッシュを描いた伝記小説の映画化。ドリームワークスの中ではちょっと毛色の変わった作品を撮るロン・ハワードらしい作品といっていいだろう。

 予備知識なしに、1回見れば非常に面白い。しかし、2度目に見たらどうなのかという気はする。物語のからくりと、ジョン・ナッシュという人間の面白さがこの映画の眼目だから、からくりがわかってしまった2度目には1度目ほどの面白さは味わえないと思う。まあ、でも2度目はいけるかな。からくりを知った上で見る2度目はまだ面白いかもしれません。いかにうまくからくりが隠されているかを観察するのが面白いかもしれない。見てない人には何のことやらさっぱりわからないと思いますが、ネタばれ厳禁なのでそのまま押し切ります。
 これはつまり、この映画の面白さはあくまで物語にあるということ。一つ一つしっかりと組み立てられた物語であるだけに、2時間長に時間も一気に見せてしまう面白さがあります。この辺はドリームワークス作品に共通して見られる要素かもしれない。それは徹底的なエンターテインメント。ハートウォーミングな感動作でも、そこにあるのは哲学ではなく、娯楽。2時間、あるいは2時間超の時間、観客を別世界に引き込むことができる力。それは「ドリーム・ワークス」という社名にも現れていること。
 そんなことを考えていると、この物語自体、かなりドリーム・ワークス的なものかも知れない。現実の生活に「夢」を埋め込む作業、それがドリーム・ワークスの仕事だとするならば、このジョン・ナッシュは…(ネタばれ防止)
 確かに、これがアカデミー賞? という気はしますが、振り返ってみればアカデミー賞とは芸術的な映画やメッセージ性の強い映画ではなく感動できる娯楽作品に贈られてきたもの。だから、この映画はまさにアカデミー賞にふさわしい。「名作」といえる作品ではないけれど、今のハリウッドに典型的な作品といっていいでしょう。もちろんこの映画から何らかの「哲学」を読み取ることはできます。しかし、それはあくまで可能だというだけで、作り手としては映画を見ている間、その世界に没頭してくれればいいという考えで映画を作っているような気がします。そこから自分の現実にひきつけて哲学したい人はご自由にどうぞという感じ。
 私はちょっと考えてみました。ジョンが暗号を解読するシーンで。CGを使って浮き上がってくる文字を見ながら、確かにアイデアが浮かぶ時ってこうだよな。と。視覚というのは非常に選択的で、すぐ隣にあるものでも見たくないときには見ないでいることができる。特に物語に集中しているときはそうだなと。それは、いわゆる現実とは違っている。つまり、すべてのものが平等にものである世界とは違う選択的な世界である。何が現実で、何が非現実であるかなんてそんな程度の問題だと私は思います。そこに線を引くことすらナンセンスだと。

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