Mission: Impossible 2
2000年,アメリカ,124分
監督:ジョン・ウー
原作:ブルース・ゲラー
脚本:ロバート・タウン
撮影:ジェフリー・L・キンボール
音楽:BT、ハンス・ジマー
出演:トム・クルーズ、ダグレー・スコット、タンディ・ニュートン、ヴィング・レームズ

 バケーション中のイーサン・ハントのもとに、ヘリがやってきて、新たな指令が伝えられた。それは偽装された飛行機事故によって盗み出された新しい病原菌を奪い返すというもの。そのパートナーとして、腕のいい女泥棒ナイアを指名してきた。早速彼女を見つけ、接触を図るイーサンだったが…
 トム・クルーズ製作・主演の『M:I』シリーズ2作目は、香港映画の雄ジョン・ウーが監督、ジョン・ウーらしく2丁拳銃にワイヤー・アクション満載の痛快ハリウッド映画になっている。

 ジョン・ウーはすごいですねえ。ハリウッドにどっぷりつかっているのか、ハリウッドをおちょくっているのかわからないですが、ハリウッドに来て、ハリウッドよりハリウッドなハリウッド映画を作ってしまう。あるいは自分をもパロディ化した映画のパロディのパロディ映画なのか。とにかく「なんじゃそりゃ」というコメントしかできない映画。映画の最初から最後まで「なんじゃそりゃ」のオンパレード。これをすごいといわずになんという。面白いと思うかどうかは個人の好み。ある意味最後まで目をはなせない。
 ジョン・ウー的にすごいのは、自分の十八番(おはこ)2丁拳銃、ワイヤーアクション、そして鳩をすべてズガンと入れてしまったこと。ワイヤーアクションはどうもさえない。鳩はなかなかいい。2丁拳銃は…ただ銃を両手に持っているだけ。
 ハリウッド的にすごいのは、ハリウッド映画にありがちな先の先まで読めてしまうその筋立てがスパイ映画に適用されてしまっていること。敵のアジトから逃げるとき、なぜ急にバイクに乗った警備員が、しかも2人、しかもバイクは黒と赤、形も違う、が登場するのか… それはもちろんトムが乗り、もう一台には… この臆面ない過剰サービスがものすごい。
 スローモーションの過剰さもすごい。私はここで以前から『マトリックス』以後のアクション映画の過剰さについて語っていますが、この映画のジョン・ウーの作り方はそれらの過剰さとは別の方向に向きながら、やはり過剰さを前面に押し出しているところが面白い。『マトリックス』以後の過剰さを支える一つの要素であるワイヤー・アクションを以前から使っている監督であるにもかかわらず、そこでは勝負せずに、他の部分で勝負し、しかしそこでやはり過剰な演出をする。そのあたりがジョン・ウーのすごいところなのではないかと思います。
 この『M:I』シリーズはトム・クルーズのイメージ・ビデオという評判が高いですが、この「2」をみて、ジョン・ウーはそれを逆手にとって、トム君をだましているんじゃないかと思います。トム・クルーズをかっこよく見せる演出であるとトム・クルーズを納得させながら、映画を見るとそうでもない。「かっこいいだろ」光線が出すぎてかっこ悪い。この映画を見てまず感じるのは「トム・クルーズの背が低くない!」ということで、それはきっとそこまで気を使ってのキャスティング。そのやりすぎなところ(また過剰さ)を見るにつけ、逆にトムは道化にされてしまっているという印象も受けます。
 最後のエンドロールに香港映画ばりのNG集があれば、その疑惑は私の中で確信に変わったのですが、残念ながらNG集はなし。ジョン・ウーはやろうと思ったけれど、プロデューサーのトムに止められたという筋書きであることを私は望みます。

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