Small Time Crooks
2000年,アメリカ,95分
監督:ウディ・アレン
脚本:ウディ・アレン
撮影:チャオ・フェイ
出演:ウディ・アレン、トレイシー・ウルマン、ヒュー・グラント、エレイン・メイ

 レイは銀行強盗に失敗して2年間服役していた、今はうだつのあがらない皿洗いの初老と男。そんなレイが奥さんのフレンチーにチョコレートを買って帰る。何か裏があるとフレンチーが勘ぐったとおり、レイはさえない二人の仲間と銀行の2軒隣の空き家を買い取ってトンネルを掘るという計画を立てていたのだった。しぶしぶ計画に乗ったフレンチーはカモフラージュのためクッキー屋さんをはじめたが…
 ウディ・アレンとドリーム・ワークスが組んだメジャー向けドタバタ・コメディ。癖がなくなった分、いいところもいやなところもなくなってしまった感じ。

 この映画でいいところは小ネタのみ。ウディ・アレンがベチャベチャとしゃべるところは、ウディ・アレンらしさもあり、癖もあり、悪くない。それほど笑えるところがあるわけではないけれど、「ああ、ウディ・アレンを見ているんだ」という気になる。しかし、全体的に見ると、ウディ・アレンは普通の人になりすぎたと思う。ちょっと変わり者で、頭の足りない、初老の男。そんな薄いキャラクターでは映画も締まらない。
 それより何より、この映画でしょうもないのは物語。毒もなく、味もなく、感動もなく、意味もない。結局のところ貧乏人が小金をもうけて金持ちの振りしたってそんな金は身につかない。貧乏人は貧乏人らしくしてりゃいいんだと言っていると解釈したくなるようなお粗末な物語。貧乏人が金持ちに近づこうとすることで、金持ちを批判しようとするのかと思いきやそうでもなく、金持ちは金持ちで、いやなやつだけど別に悪い人ではないといいたいようだ。ひとつ言っているといってもいいことは「金持ちは孤独だ」ということくらい。だからどうした、それがなんだ。
 金持ちが貧乏人を馬鹿にして、貧乏人は馬鹿にされたまま終わる。貧乏人は金持ちになりきれなくて、貧乏人であることに満足して終わる。結局何の波風も立たず、状態は保存され、いたずらに時が過ぎただけ。
 何でウディ・アレンはこんなしょうもない映画を撮ってしまったのか。私はウディ・アレンはあまり好きではないけれど、彼なりのスタイルがあることは認めるし、それを好む人がいることも認める。私の好みにはあわないというだけ。でも、この映画はそんなアレンらしさもなく、ドリームワークスに寄りかかって、端っこで小さく自分の芸を見せているだけに見える。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です