The Lord of the Rings: The Fellowship of the Ring
2001年,アメリカ=ニュージーランド,178分
監督:ピーター・ジャクソン
原作:J・R・R・トールキン
脚本:ピーター・ジャクソン、フランシス・ウォルシュ、フィリッパ・ボーエンズ
撮影:アンドリュー・レスニー
音楽:ハワード・ショア
出演:イライジャ・ウッド、イアン・マッケラン、リヴ・タイラー、ヴィゴー・モーテンセン

 世界的に有名なトールキンのファンタジー小説『指輪物語』。映像化は不可能といわれ、これまで映画化されていなかった作品をピーター・ジャクソンが1部作として映画化。この作品はその第1作に当たる。
 物語は現実の世の中とは全く異なる世界で展開される。人間以外の種族もたくさん生きている世界。はるか昔、闇の冥王サウロンが作った指輪。悪の力を秘めたその指輪がおよそ3000年後、ホビットの青年フロドの手に渡ったことから物語りは展開される。

 この世界観はあらかじめ知識を持たずに見る人には厳しいものかもしれない。ホビットやドワーフやエルフという人間ではないが姿かたちは人間に非常に似いる生き物があまり説明されないままに出てくる。映画を見ていれば徐々にその関係や性格がわかってくるけれど、それがわかるまでに映画は1時間から1時間半のとき費やし、ファンタジーになじみのない人なら飽きてしまっても不思議はない。
 だからこの映画は『スター・ウォーズ』とか『ハリー・ポッター』などのように一般的にヒットする映画ではなく、ある意味では特定の観客に向けた映画である。とはいっても、もともとの原作が非常に有名で読者も多いので、そのターゲットはある程度は広く、わたしも子供のころに小説を読んだ(ほとんど覚えていないけれど)ので、物語に入り込むのにあまり困難はなかった。
 監督のピーター・ジャクソンもいわゆるメジャー系の監督ではなく、悪趣味系、カルト系の監督であり、ファンタジー的な世界を作るのは得意かもしれないけれど、一般受けするような映画は作れない。さらに、これといったスターも出ていない。というような問題がたくさんあり、映画としては非常にじみ。
 それでもやはり映画として見ごたえがあり、ある程度世界的にヒットしたのも原作の力と、原作を忠実に映画化した監督の力。人間とホビットの縮尺とか、いろいろな怪異な生き物とか、CGを駆使したりしながらうまく作り上げる。ホビットがロングショットで写されるときに子供の代役が使われていることはちょっとあからさま過ぎるけれど、まあ映画に入り込むのを邪魔するほどではない。

 などなどなどと御託ばかり並べているのは、この映画が一本の映画といえるものではなく、一本の映画の3分の1でしかないものだからで、この映画の本当の評価というのは3本すべてを見なければ下せないような気がする。それでもこの映画は1本の映画としてリリースされているので、それに対する評価を下さざるを得ないが、そうなると不完全な映画であるとしかいえない。
 でも、わたしは続きに期待して見たいと思います。
 ひとつ不思議だったのは、主人公のフロドの目の色がころころ変わること、青、緑、グレーというようにいろいろな色に変わる。あからさまに処理してかえているところもあるけれど、自然に変わっているように見えるところもある。これは何かのなぞが秘められているのか?

 2度目は、スペシャル・エクステンテンデッド・エディションというので見たのだが、このバージョンでは、冒頭の部分に説明が加わってかなりわかりやすくなっている。これによって映画全体をすっきり見ることができるし、2度目ということで、物語の進み行きにイライラせず、ゆったりと見ることができるというのもいい。ゆったり見てみるとこの作品はさすがに作りこまれていて面白い。なんといっても作品の世界観がいい。原作に忠実に時代設定をして作っているわけだが、その時代設定というのが「動力」が開発される以前であるということが重要だ。車もなければもちろん戦車もないし、それ以前に火気というものがない。これはいわば『ベン・ハー』のようなもので、徹底的に人と人(必ずしも「人間」ではないが)の戦いというところが重要になってくるのだ。こういう設定ではヒーローが生まれやすく、ドラマが組み立てやすい。そして、この映画は複数のヒーローを用意し、それぞれにドラマを作り上げる。そのようにして編み上げられた物語は懐が深く、観客は誰かひとりに感情移入すればよく、観客を引き込みやすい。問題は、全てのドラマが密接にかかわりあっていないと、観客が飽きてしまうということだが、この第1話の段階ではそれに成功していると思う。

 ところで、このスペシャル・エクステンテンデッド・エディションはエンドロールが30分くらいあって、そのうち20分くらいが”Special Thanks”に費やされているけれど、これはいったい何? と思いました。感謝したい気持ちはわかるけど、20分も見ないよねー、誰も。

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