いい意味でも悪い意味でも“くだらない”。とにかくくだらない。
Be Kind Rewind
2008年,アメリカ,101分
監督:ミシェル・ゴンドリー
脚本:ミシェル・ゴンドリー
撮影:エレン・クラス
音楽:ジャン=ミシェル・ベルナール
出演:ジャック・ブラック、モス・デフ、ダニー・グローヴァー、ミア・ファロー、メロニー・ディアス、シガーニー・ウィーヴァー
ニュージャージーの小さな町のレンタルビデオ店の店員マイクは店を開ける店長に店を任されるが、幼馴染で変わり者のジェリーに誘われて何故か発電所を破壊に。しかしそこでジェリーは電流を浴び、磁気を帯びてしまう。そのジェリーによって店のビデオが全部消えてしまう。常連のファレヴィチに『ゴーストバスターズ』をリクエストされた彼らは、自分で作ってしまおうと考えるが…
ミシェル・ゴンドリー監督、ジャック・ブラック主演のコメディ。チープなリメイクを作るというのは面白いが…
ジャック・ブラックが『ゴーストバスターズ』や『ロボコップ』のリメイク版を勝手に作るという話、その滅茶苦茶な内容が流れる予告で面白そうだと思った。たしかに、そのリメイクを作る場面は面白い。リメイク作品が面白いというよりは、その作り方の適当さがあまりに下らなくて面白い。
最初は『ゴーストバスターズ』、次に『ラッシュアワー2』、そのあとは基本的にダイジェストというか一瞬しか撮影シーンが映らないのだが、『2001年宇宙の旅』やら『シェルブールの雨傘』やらいろいろな作品が登場して笑える。
しかし、はっきり言って面白かったのはその部分だけ、序盤はどうしてビデオが消えることになったのかという説明がまどろっこしいし、終盤は“いい話”になってしまってなんとも興ざめだ。
この作品の肝は彼らが作った“リメイク”が著作権侵害などなどで訴えられるというところだと思うのだが、その部分もしまりがない。「海賊版許すまじ」というハリウッドの言い草はわかるし、こんな滅茶苦茶なものを野放しにする法はないとは思うが、素人が作るこの程度の質のものにまで目くじらを立てるというのもどうなのか。
こういう「おふざけ」は鷹揚に許してしまうくらいの度量がメジャーになければ、自由な発想などというものは生まれないし、結局のところ目先の利益にとらわれて将来の芽を摘むということにもなりかねない。文化は模倣から発展するということはこの作品でも取り上げられている『ライオン・キング』が手塚治虫の「ジャングル大帝」に酷似していること(ディズニーは否定しているが)からも明らかだ。またこの「ジャングル大帝」はディズニーファンである手塚治虫が『バンビ』に影響を受けて書いたとも言われている。
この作品はその著作権が問題になるあたりでお茶を濁してしまっているのも全体がすっきりしない理由になっているだろう。ジャック・ブラックも人のいいキャラが鳴りを潜めて、ただの異常者のようになってしまっているのが残念。
この作品で一番よかった役者はアルマ役のメロニー・ディアスだろうか。いわゆる“ニューヨリカン”の若手女優、個性的な顔立ちと印象的なまなざしはインディーズを中心にさまざまな作品に需要がありそうだ。実際、2006年には“A Guide to Recognizing Your Saints”という作品でインディペンデント・スピリット・アワードの助演女優賞にノミネートされている。
映画としてはあまり面白くはないが、見所はいろいろといったところか。
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