学園ものの人気シリーズのゴーストライターをしているメイビスは都会の孤独な生活に疲れ、輝いていた高校時代の自分を懐かしんでいた。そんな時、高校時代の恋人バディから子どもの誕生祝のパーティーの招待状が届く。メイビスはバディとよりを戻せば高校時代の輝かしい生活が戻ってくると信じて帰郷するのだが…
『JUNO/ジュノ』の監督・脚本コンビがシャーリーズ・セロンを迎えて撮ったコメディ・ドラマ。ビッチな女を演じたシャーリーズ・セロンはなかなか。

 この映画はなかなか後味の悪い映画だ。しかしそこがいい。

シャーリーズ・セロン演じるメイビスはアラフォーの独身(あとでバツイチとわかる)で、作家(といってもゴーストライター)。職業柄いつも家で一人で仕事をしていて、友達はといえば飼っている犬と同じ田舎から都会に出てきた唯一の同窓生くらい。そして、男関係はといえば、会って一回寝たらさようならというその場限りの関係ばかり。

そんな彼女が思うのは学校のアイドルだった高校時代のこと。そして、その高校時代の栄光を取り戻すべく何を思ったか結婚して子どもが生まれたばかりの元彼とよりを戻すべくふるさとへと帰るのだ。そこで出会ったのはほとんど記憶にもないいじめられっ子の同級生マット。特にやることのないメイビスはマットに計画を話し、手を貸してもらおうとする。

タイトルの『ヤング≒アダルト』というのは主人公がヤングアダルト小説の作者であるという意味と同時に、主人公自身がオトナになりきれていない「アダルトチルドレン」であるという意味も込められているのだろう。この主人公が「オトナになりきれていない」というのはその自分勝手・自己中心・自意識過剰の行動に見て取れる。まさに高校時代のままに時ばかりが過ぎ、まわりも同じように考えていると勝手に思い込んで迷惑をかける、そんなオトナだ。で、まあ、そんなオンナだから周囲は白い目で見るが本人は気づかないという感じで話が進んでいく。

この映画が描くのは人によってものの見え方というのはいかに違うかということだ。物語の中心は田舎町にあり、そこで生まれ育った人たちの価値観というのは似通っていて、そこにはそこの常識というものがある。しかしメイビスはそれが嫌で都会へと出てそれなりに暮らしている。また、マットはその田舎で生まれ育ちながらそこではアウトローであり多くの人々と価値観を共有してはいない。だから、3者の物の見方というのは必然的に違ってきて、そのズレが様々な軋轢を生み、時には共感を生み、笑いを生み、ドラマを生む。

この映画はその部分をとても上手く描いていると思う。そしてそれがあまりわかりやすく説明されていないというのもいい。観客もまた自分の価値観を持って映画を観るしかないので、その3者に対する距離感というのを感じながら映画を見ることになる。その距離感を意識する必要はないのだが、その自分との「ズレ」をうまく感じとることができれば、「ほうほう」と納得し、後味の悪い結末にも溜飲を下げる事になるだろう。

ハッピーでわかりやすいラブコメを期待する人にはイマイチぴんと来ない映画かもしれないが、ちょっとひねくれたあなたにはきっとピタリとくる映画ではないだろうか。

2011年,アメリカ,94分
監督: ジェイソン・ライトマン
脚本: ディアブロ・コディ
撮影: エリック・スティールバーグ
音楽: ロルフ・ケント
出演: J・K・シモンズ、エリザベス・リーサー、シャーリーズ・セロン、パットン・オズワルト、パトリック・ウィルソン

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