シュリ

Swiri
1999年,韓国,124分
監督:カン・ジェギ
脚本:カン・ジェギ
撮影:キム・ソンボク
音楽:イ・ドンジュン
出演:ハン・ソッキュ、キム・ユンジン、チェ・ミンシク、ソン・ガンホ

 北朝鮮の諜報員養成所、一人の女性が過激な訓練を終え任務についた。女の名はイ・バンヒ。「南」に潜入した彼女は数々の暗殺と爆破事件に関与した。そのイ・バンヒを追う南の二人の諜報部員、ユ・ジョンウォンとパク・ムーヨン。情報提供を申し出た武器密売人に二人が会いに行くと、二人の目の前で密売人が狙撃され、殺された。 ハリウッド顔負けのアクション大作。南北の対立という深刻な問題を扱っているのかと思えばそういうわけでもなく、ひたすらアクション。しかしアクションシーンは迫力あり。 

 見る前の情報で、韓国映画で「北朝鮮のスパイが出てきて」とか、「済州島が出てくる」とか予備知識があったため、完全に単純なアクション映画で驚き。しかし正解。社会派映画にしてしまったら楽しめなくなってしまうと思う。
 筋も単純、からくりも簡単に気づく。ラストの爆破を止めるところも少々作り物っぽい。しかし、アクション(というか、爆破とか)は大迫力だし、惜しげもなくガンガン打ちまくるのも楽しい。一番すきなのは、CTX爆弾。そのヴィジュアルがすき。透明の液体の中のオレンジ色の玉。
 これは余談ですが、この映画深読みするするなら、ひとつ、二人組のイ・バンヒの恋人じゃないほう(名前忘れてしまった)は絶対に相棒のことが好き。ホモセクシュアル的に。3人で食事をしているシーンなんかはいじらしい。そして、好きだからこそ、相手の恋人が疑わしいことに最初に気づく。深読みすぎか…?でもそんな気がするな。皆さんはそんなことは思いませんでしたか? 

301・302

301・302 
1995年,韓国,100分
監督:パク・チョルス
脚本:イ・スォグン
撮影:イ・ウンギル
音楽:チョイ・ジョンファ
出演:パン・ウンジン、ファン・シネ、パク・ヨンノク

 301号室に男が訪ねてくる。向かいの302号室の女が消えたと言う。301号室の過食症の女と302号室の拒食症の女。二人の間に何があったのか?二人の過去を明かしていきながら彼女たちの不安定な心を描く。 ストーリーには関心できないが、描写力はなかなか。見ている側の精神にまで痛みが伝わってくる。色彩と構図にかなりのこだわりがあるようで、原色の組み合わせと、上からの俯瞰ショットが多用される。少しざらついた映像も観衆の精神を逆なでする。 我々はこういう、映画の中の何かを否定しようとする映画を評価しなくてはいけないのかもしれない。 

 少し、ふたりの主人公の人物像のつくりが浅かったかもしれない。過去の出来事と現実の精神障害がこれほど直接的につながるほど人間の心は単純ではないと思う。それに、プロットももう少し練って欲しかった。最初の10分ほどを見れば、最後のからくりは簡単に予想できてしまう。それが映画の後半の冗長さにつながっているのだろう。その辺りまでぶち壊してしまえば、映画としてかなり新しいものになれたかもしれないと思うと、惜しいところだ。
 原色の組み合わせや、物を食べる口のアップなど、美しさをぶち壊してゆくところにはなかなか迫力がある。
 いかにも若い監督の映画という感じの映画なので、熟練してゆくとどのような作品を作るようになるのかが楽しみ。新しい作品としては、柳美里原作の「家族シネマ」の監督をしているようなので、これも見てみようかな。

りんご

The Apple
1998年,イラン=フランス=オランダ,86分
監督:サミラ・マフマルバフ
脚本:モフセン・マフマルバフ、サミラ・マフマルバフ
撮影:エブライム・ガフォリ、モハマド・アーマディ
出演:マスメ・ナデリー、ザーラ・ナデリー、ゴルバナリ・ナデリー、ソグラ・ベロジ、アジジェ・モハマディ

 イラン映画の巨匠モフセン・マフマルバフの娘サミラ・マフマルバフの初監督作品。父モフセンも脚本で参加している。
 父親が娘を家に11年間閉じ込めて外に出さなかったという実際の事件を元に、本人たちの出演で、その子達がはじめて外に出たときの様子を映画化。世間というものをまったく知らない少女たちの目から見た世界の不思議さを描いた。
 監督はこの事件を社会的な問題として描くのではなく、外の世界をはじめてみた少女たちを中心に描いた。彼女たちから見た世界がいかに驚きにあふれ素晴らしいものであるのか。
 傍若無人な彼女たちの行動がとてもほほえましく、爽やかな気分で見ることができる。 

 この映画は、サミラが父が撮影のためにとってあった機材をかりて、ほとんど準備もせず撮影に入った。ぶっつけ本番、1日撮影しては次の日のプロットを考えてゆくという方法でとられたらしい。しかも、父モフセンは撮影には立ちあわず、サミラが持ち帰った膨大なフィルムを一緒に編集したということらしい。
 この映画にはなかなか楽しい場面がたくさんあるが、ひとつ気に入っているのは、マスメとザーラが一人の少女と友だちになって、その子をたたいてしまうが、りんごを渡して許してもらおうとする場面。りんごは彼女たちにとって宝物のようなものだから、彼女たちにとってはすごく意味のあることなんだろうけど、普通に考えると、理不尽なこと。しかしその辺りがかわいいのではある。
 この作品はカンヌ映画祭の<ある視点>部門に正式出品され、カンヌ映画祭史上最年少監督(18歳)として話題になった。