チート

The Cheat
1915年,アメリカ,44分
監督:セシル・B・デミル
脚本:ヘクター・ターンブル、ジャニー・マクファーソン
撮影:アルヴィン・ウィコッフ
出演:ファニー・ウォード、ジャック・ディーン、早川雪州

 株の仲買人リチャード・ハーディーの妻のエディスは社交界を生きがいとして、浪費癖があった。リチャードは今回の投資がうまく行くまで節約してくれと頼むのだがエディスは聞き入れない。そんな時、エディスは友人からおいしい投資話を聞き、預かっていた赤十字の寄付金を流用してしまう…
 セシル・B・デミルの初期の作品の一本。日本人を差別的に描いているとして在米邦人の講義を受け、3年後に字幕を差し替えた版が作られる。18年版では「ビルマの象牙王ハラ・アラカウ」となっている早川雪州はもともとヒシュル・トリという名の日本人の骨董商という設定。日本ではついに公開されなかった。

 主な登場人物は3人で、それぞれのキャラクターがたっていて、それはとてもいい。デミルといえば、「クレオパトラ」みたいな大作の監督というイメージだけれど、この映画の撮られた1910年代は通俗的な作品を撮っていたらしい。簡単に言えば娯楽作品で、だから少ない登場人物でわかりやすいドラマというのは好ましいものだと思う。サイレントではあるけれど、登場人物の心情が手に取るようにわかるので、気安く楽しめるというイメージ。特に妻のエディスのいらだたしいキャラクターの描き方はとてもうまい。雪州演じるアラカウが基本的に悪人として描かれているけれど、必ずしもすんなりそうではないという微妙な描き方だと思います。
 ということで、前半はかなり映画に引き込まれていきましたが、後半の裁判シーンはなかなかつらい。主に弁論で展開されていく裁判をサイレントで表現するのはかなりつらいと、トーキーが当たり前の世の中からは見えるわけです。結局字幕頼りになってしまって、映画としてのダイナミズムが失われてしまう気がします。サイレント映画はやはり字幕をできる限り削って何ぼだと私は思うわけです。そのあたりに難ありでしょうか。
 映画史的にいうと多分いわゆるハリウッド・システムができるころという感じでしょうか。監督は芸術家というよりは職人という感じがします。それでも、編集という面ではかなり繊細な技術を感じます。短いカットを挿入したり、編集によって語ろうとするいわゆるモンタージュ的なものが見られます。しかし、当時はおそらく監督が編集していたわけではないので、必ずしもデミルの表現力ということではないと思いますが。監督という作家主義にこだわらず、この一本の映画を見るとき、シナリオも演出もカメラも編集もかなり優秀だと思います。