イスラム風の名前に改名したという男スティーヴ・ヤンガーからアメリカの3都市に核爆弾を仕掛けたというテロ予告がなされる。FBIのヘレン・ブロディ捜査官はすぐさま捜査を開始するが、まもなく犯人はすでに逮捕されているという知らせが来る。ヘレンが事聴取に訪れると、すでに拷問まがいの尋問が始められており、そこで尋問スペシャリストという「H」という男が現れる…
テロと拷問を扱ったサスペンス。アクション要素はないが、拷問の場面はなかなかきつい。

 爆破予告とか誘拐とかそういう題材は、尋問が物語の主題になることが結構ある。映画では画が地味なせいかあまり見られないけれど、小説なんかではかなりある。尋問というのは言葉(と表情などのボディランゲージ)によるものだから小説と相性がいいのだろう。映画でもなくはないが、その場合、表情などの細かな部分のクロースアップ何かを使って言葉にならない言葉を尋問官が読み解くという感じになっていると思う。

それよりも映画的に映える(というと語弊があるが)のは拷問だ。物理的な苦痛によって自白を引き出そうという拷問は動きがあって映画向きだ。その拷問によって犯人から自白を引き出せるのかというのがこの映画の眼目。そして、ここで描かれるのは「拷問とは何か」ということだ。それは端的に言えば「恐怖」を操ること。この映画で拷問を受けるスティーヴは間違い無く犯人であり、しかも自分が拷問を受けることを予期していたという特殊な相手、その相手に恐怖を与えまやかしではない本物の自白を引き出すにはどのような恐怖を与えればいいのかというのがこの映画の内容だ。

だからこの映画は怖い。「まさかそこまで…」というくらい意外性のある脅しで無ければ効果がないわけだから、そのような脅しが繰り返されるわけで、それはやはり怖い。この「怖さ」の演出はこの映画の優れた点であると思うし、難しいことを考えずに見るのなら、ホラー映画のようにこの怖さが映画の面白さになると思う。

しかし、この拷問はもちろん国際条約で禁止されているのでそこには問題がつきまとう。だいたい拷問を行うのは「悪」の組織で法律を執行する側は行わないというのがルールだ。しかし、この映画では軍やCIAがその拷問を行なっている。ほとんどの人はそれに反対するのだが、それは行われ続け、効果が上がっているようにも見えてくるわけで、そこからつながるのは「なぜ拷問は禁止されているのか?」という点だ。まあこの映画の条件はかなり特殊なので、拷問は禁止されて当然と受け止める人がほとんどだとは思うが、この映画はホラーというエンターテインメントを提供しながら、どこかで「拷問」についても考えて欲しいといっているようにも思える。

そして、この映画の題材であるテロと拷問から私が想起したのはグアンタナモ。特にマイケル・ウィンターボトム監督の『グアンタナモ、僕達が見た真実』だ。この作品はテロリストの疑いをかけられたイギリス人の若者たちがグアンタナモに収監され拷問まがいの尋問を受け続ける物語、映画の性質としてはまったく違うが、連想せずにはいられない。テロとの戦いを「戦争」と言うアメリカの事を考えて、その中での拷問の意味を考えるなら、是非こちらの映画も観て欲しい。

『4デイズ』の方に戻ると、この映画の終わり方はなかなか示唆的だ。誰のやり方が正しくて誰が間違っていたかということをあとから言うことは可能だろうが、この結末にはそれ以上の広がりがあり、もっと大きなシステムについても考えさせられる。サスペンス映画ではあるが、そこからの広がりも考えられるそんな映画。

2010年,アメリカ,97分
監督: グレゴール・ジョーダン
脚本: ピーター・ウッドウォード
撮影: オリヴァー・ステイプルトン
音楽: グレーム・レヴェル
出演: キャリー=アン・モス、サミュエル・L・ジャクソン、スティーヴン・ルート、ブランドン・ラウス、マイケル・シーン

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