1年にどれだけ多くの種類の鳥を目撃できるかを競う「ザ・ビッグ・イヤー」というコンテスト、バードウォッチャーなら生涯に一度は挑戦したいと考えるこの大会にコンピュータ技術者のブラッドもいよいよ挑戦しようとしていた。同じ頃、会社社長のステュも引退し、挑戦しようと決める。現チャンピオンのケニーは「今年はやらない」と宣言していたが、記録が破られないかとヒヤヒヤして家を開けてばかりいる…
実際に米国で行われているバードウォッチングコンテストをモチーフにしたコメディ・ドラマ。監督は『ブラダを着た悪魔』のデヴィッド・フランケル。
1年間にどれだけの種類の鳥を目撃することが出来るか。なんていう大会がある事自体初耳で、特に鳥が好きでもない輩にとってはそれに人生をかけるなんてなんとバカらしいと思うわけだけれど、まあ趣味というのは概してそんなもので、自分の好きな分野でアメリカ一、あるいは世界一という称号を得ることが出来るのなら、それに人生をかけるというのもわからなくはない。
で、そんな大会に三人のメンバーが参加、それがジャック・ブラック、オーウェン・ウィルソン、スティーヴ・マーティンという個性豊かな役者陣。ジャック・ブラック演じるブラッドは鳥好きをこじらせて結婚にも失敗し、いまも実家ぐらしで仕事もこのビッグイヤーに参加するための手段というダメな大人。オーウェン・ウィルソン演じるケニーは「もう破られないだろう」という記録を打ち立てたチャンピオンだが大会に打ち込むばかりに離婚を繰り返してしまう。スティーヴ・マーティン演じるステュは社長を辞めてビッグイヤーに参加したいのだが、彼がいないと社員たちは右往左往してしまう。
そのビッグイヤーに参加していることを競争相手に明かさないことで有利に進めようとするというのが常套手段ということで、相手が参加しているのかどうなのかという探り合いもしつつ、ブラッドとステューは仲良くなる。その季節しか見られないという渡り鳥を見にアラスカに行ったり、嵐に乗ってたくさんの鳥が来るといえば南部に向かう。
本当にただそれだけの映画なんだけれど、最終的にその一年間でそれぞれの人生にそれなりの変化が生じて、ドラマとしても上手く収まるという話。とはいっても、みんな幸せに暮らしましたというハッピーエンドではなく、味があるというか、落ちもつけつつ、少し考えさせもするような終わり方で、それもなかなかいい。
そして、鳥なんかにまったく興味がなく見ても、彼らが次々と鳥を発見するうちに、なんだか鳥に興味が出てきてしまって、エンドロールでアメリカ国内で観察できる鳥が延々と映し出されるのにはついつい見入ってしまう。
コメディ好きにとってはかなりの豪華キャストの映画だけれど、まあこのラインの映画はあまり劇場公開されずDVDスルーになるというのが通例。しかもこれは題材がバードウォッチングというまったく一般受けしないものなので、劇場公開されたことがむしろ驚きだけれど、見てみるとだれでも楽しめるいいコメディだ。爆笑!というわけではないけれど、笑えるし題材から何からバカバカしいというのがやはりコメディ映画として非常にいい。
映画の内容ではなく配給側の話をすると、FOXとシネマートが提携して今後もこういう作品を配給していくということ。シネマートはミニシアターというか小規模なシネコンというか、独自に配給もしている複数館ミニシアターなのでこういう配給が可能なのかなと。次の作品は「WIN WIN ダメ男とダメ少年の最高の日々」というこれまたヒットしなさそうなコメディ。ぜひ頑張って欲しい。
2010年,アメリカ,100分
監督: デヴィッド・フランケル
原作: マーク・オブマシック
脚本: ハワード・フランクリン
撮影: ローレンス・シャー
音楽: セオドア・シャピロ
出演: アンジェリカ・ヒューストン、オーウェン・ウィルソン、ジャック・ブラック、スティーヴ・マーティン、ブライアン・デネヒー
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