ある新聞記者が精神病院に収容されている女性サラに60年前の話を聞きに行く。彼女は2009年に起きた疫病の正体が実は疫病ではなく政府の陰謀であることを知っているという。事件は彼女の元恋人が刑務所から出所してきた日、町外れで不思議な物体が見つかるところから始まる。その物体を発見した男は謎の寄生虫に侵されそれが次々と宿主を変えていく…
B級パニックホラー。監督はB級映画の撮影監督を務めてきたハワード・ウェクスラー。『28日後…』のシリーズとは無関係

 これをB級映画というのはB級映画に申し訳がない。B級映画というのは低予算なりに工夫して安っぽいけれど面白い映画を作り上げたもの。さらに安っぽかったりハチャメチャだったりするものをC級やD級、果てはZ級と言ったりすることもあるが、それらに共通するのはハチャメチャなりの面白さだ。この映画にはそれがない。ただ安っぽいだけ。あえて名付けるとしたら中途半端なF級映画というところだろうか。

設定としては60年前の事件の真相を経験者が語るという形になっていて、そこに政府の陰謀だの何だのが関わっているとほのめかされる。しかし、実際にどのへんが陰謀で何を隠し何をしようとしているのかもよくわからない。しかもその寄生虫を倒す唯一の手段であるというが利尿剤なのだが、それがどう効くのかもよくわからない。要は、『エイリアン』的な寄生虫が人間を乗っ取ったら怖いだろという安易な設定だけがあって、それがどう機能するかがまったく詰められてないから、緊迫感が出ない。

アクションも迫力がないし、火事などの視覚効果にいたっては昭和のTVの特撮モノよりお粗末なレベル。これを「映画だ」と言い張る傲岸さを褒めたくなるくらいだ。

他にも突っ込みどころだらけで一つ一つ突っ込んで行ったらそれに忙しくて映画なんて見ていられない。本当に暇な時に友達とそれにいちいち突っ込みながら見たら多少は楽しめるかもしれない。

そういうひどい映画ではあるけれど、こういう映画に限って映画に対する愛を感じてしまう事がじつは多い。この映画も大部分は他の映画の模倣でしかないんだけれど、その模倣というのはオリジナルに対する愛から来ているのではないかと思えてしまう。この映画の件の「寄生虫」の造形もひどいものなんだけれど、すでにあるものに似せないように、でも不気味さを備えているような物を作ろうという思いは感じられる。

まあそんなことを思ったからといって映画が面白くなるわけじゃないけれど、映画好きな人ならこんな映画でもいいから作りたかったという思いをどこかで感じ取ってしまうのではないだろうか。

DATA
2009年,アメリカ,95分
監督: ハワード・ウェクスラー
脚本: ブライアン・ブルワー
撮影: キャメロン・D・キャノン
音楽: ハビエル・アバッド・コラル
出演: ケリー・ペンディグラフト、ブライアン・ゲスト、ブライアン・ブルワー、ロックリン・マンロー

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