スペース カウボーイ
Space Cowboys
2000年,アメリカ,130分
監督:クリント・イーストウッド
脚本:ケン・カウフマン、ハワード・クラウスナー
撮影:ジャック・N・グリーン
音楽:レニー・ニーハウス
出演:クリント・イーストウッド、トミー・リー・ジョーンズ、ドナルド・サザーランド、ジェームズ・ガーナー
1950年代に宇宙飛行士を目指したフランク・コービンらはアメリカ発の宇宙飛行士がチンパンジーに決まり、その夢を絶たれる。しかし40年後、フランクの設計した装置を積んだ人工衛星が軌道上で故障、協力を求めてきたNASAに対し、フランクは自分達が行って修理すると告げる…
クリント・イーストウッド監督・主演のスペース・ロマン。爺さん達が大活躍。
映画の中でも言っている通り、このときクリント・イーストウッドは69歳、文句のつけようのない爺さんだ。そのイーストウッドとチームを組む3人の中ではトミー・リー・ジョーンズだけが大分若く(46年生まれ)、彼は爺さんと呼ぶには忍びないが、他のふたりはイーストウッドとほぼ同じ年代である。
そんな爺さん達が主役のこの映画は、いわば爺さんたちの夢をすべてかなえるような映画だ。第一線を退いた爺さん達が現場に復帰し、若者達にバカにされながらもその若者達を見返す活躍をし、若い娘と恋愛などもし、仲間と団結して一つのことを成し遂げる喜びを思い出す。そんな幸せな物語だ。
そこには年をとったがゆえの問題もあり、過去の因縁もあり、若者とのギャップもある。しかしそれを乗り越えてゆくエネルギーを彼らはもっている。印象的なのは宇宙飛行士になれなかった彼らがついに宇宙にいけるかもしれないとなった今までの時間を「40年も前」と言っていたのを、最後には(意識的に)「たった40年」と言いなおすところだ。彼らは40年という時間を乗り越え、さらに成長したのだ。
だからこれはいわば爺さんのためのおとぎ話であり、したがって物語はすべて予定調和に終わる。初めてみたはずなのになんとなく既視感があるのはそのすべてが予想通りに進む予定調和がためなのだろう。
でも別にそれがつまらないと言っているわけではない。むしろ安心して楽しめるエンターテインメントだ。ベテラン俳優というのはどうしても脇役になりがちだけれど、こんな風にしてベテランが主役になるというのはいい。若い頃の切れはなくてもやはり経験がものを言い、いい味を出す。ドナルド・サザーランドなんてたいして何もしてないのだけれど、存在感がある。
これは「爺さんの、爺さんによる、爺さんのための映画」だが、そのそこに流れるロマンは少年から爺さんまでみなが共通に持つものではないだろうか。だから予定調和のどこかうそ臭い話でも反発を覚えることなく楽しめてしまう。
クリント・イーストウッドは偉大な映画監督だとは思わないが、観客を楽しませる術は知っている。それがこの作品にも表れていることは間違いない。