ビートルジュース

Beetlejuice
1988年,アメリカ,92分
監督:ティム・バートン
脚本:マイケル・マクダウェル、ウォーレス・スカーレン
撮影:トーマス・エーカーマン
音楽:ダニー・エルフマン
出演:マイケル・キートン、アレック・ボールドウィン、ジーナ・デイヴィス、ウィノナ・ライダー

 田舎の一軒家に仲良く暮らす若夫婦、夫は模型作りが趣味だった。しかしある日、車ごと川に落ちて二人は死んでしまう。ゴーストとなってその家に残ることになった新しい住人を追い出そうとするが、うまく行かない。その時、「バイオ・エクソシスト」なるビートルジュースの広告を目にするのだが…
 奇才ティム・バートンが一気にメジャーになったヒット・ホラー・コメディ。毒々しいながらもユーモアにあふれた不思議な世界。ウィノナ・ライダーもかわいい。

 これぞティム・バートン!という感じ。「猿の惑星」とか「バットマン」の大掛かりな感じも悪くはないけれど、ティム・バートンにはなんとなくB級な味わいを残して欲しい。この作品は実質的なデビュー作と言えるだけにまさにB級テイスト満載。ユーモアの作り方がとてもいい。独特のキャラクターの作り方も、もとアニメーター(しかもディズニーの!)だけあってとてもうまい。この映画の脇役のキャラクター達は一本の映画の脇役にしておくにはもったいないくらいいいキャラクターがそろっているとは思いませんか? ビートルジュース自身はそれほどとっぴというわけではないけれど、脇に脇に行くほどティム・バートンのオタクぶりがうかがえる凝りようになる。その当たりの細部に対する配慮が映画にとって生命線になっているような気がする。それはティム・バートン映画のすべてに通じて言えることでもあるような気はします。
 この作品が決して一般受けしないのはなぜだろうと考えてみる。わけがわからない。ナンセンス。安っぽい。しかし、ティム・バートンというのはお金をかけてわざわざ安っぽいものを作っているような気がする。アレック・ボールドウィンが顔を変形させるところだってクレイアニメだから相当手間も金もかかっているはず。しかしパッとみ異常に安っぽい。この当たりが受け入れられるかどうかが境界というところでしょうか。でも俺は好き。この作品と「シザー・ハンズ」は何度見ても飽きない。2つの作品はウィノナ・ライダー出ているということ以外はかなり違う映画ですが、どちらもとてもいい。あわせてみれば「猿の惑星」が何ぼのもんじゃい! と思うと思う。多分。

PLANET OF THE APES/猿の惑星

Planet of the Apes
2001年,アメリカ,119分
監督:ティム・バートン
原作:ピエール・ブール
脚本:ウィリアムズ・ブロイルズ・Jr、ローレンス・コナー、マーク・ローゼンタール
撮影:フィリップ・ルースロ
音楽:ダニー・エルフマン
出演:マーク・ウォールバーグ、ティム・ロス、ヘレナ・ボナム・カーター、マイケル・クラーク・ダンカン

 2029年、スペースステーション・オベロン号はチンパンジーを宇宙飛行士として教育し、宇宙探査を行っていた。壮絶な磁気嵐に遭遇したオベロン号はチンパンジーのペリクリーズを探査船で送り込むがペリクリーズは消息を絶ってしまったそれを見た宇宙飛行士のレオは独断でポッドを発進させ、ぺリグリーズを追った。
 1968年の名作SFをティム・バートンがリイマージュした意欲作。前作とはまったく異なる物語展開を見せ、ILMの技術を駆使した猿もすごい。

 一言で言えば期待通りのティム・バートン・ワールド。とにかく面白ければいいんだという監督の姿勢がとてもいい。そのためには原作のストーリーなんて曲げてしまえばいいし、使える技術は使えばいい。それだけばさっと割り切った作品なので、前作のような明確なメッセージがないのがむしろいい。
 猿のリアルさは相当なものだけれど、やはり不自然さは否めない。ティム・ロスはまったくもってすごいけれど、ヘレナ・ボナム・カーターの顔は今ひとつ。全般的にいってメスの猿の造作があと一歩というところ。ゴリラ系の猿たちはかなりいい。
 ネタばれは避けなくてはならない映画なので、短めにとめておきます。とりあえず娯楽映画としてはよいと思います。

バットマン

Batman
1989年,アメリカ,127分
監督:ティム・バートン
原作:ボブ・ケイン
脚本:サム・ハム、ウォーレン・スカーレン
撮影:ロジャー・プラット
音楽:ダニー・エルフマン
出演:マイケル・キートン、ジャック・ニコルソン、キム・ベイシンガー、ジャック・パランス

 罪を犯したものを罰する正義の味方バットマン。その正体は謎のままだが、そんなバットマンにライバルが現れた。
 有名なアメリカンコミック「バットマン」2度目の映画化。ティム・バートン監督、マイケル・キートンがバットマン、ジャック・ニコルソンがジョーカーと役者はそろったという感じだが、バートン作品としてもいまいち、バットマンとしてもいまいちという作品になってしまった観がある。

 ティム・バートンらしく、全体的に暗いトーンで展開されているところは好感が持てるが、そこはバットマン、正義の味方のお話なのだから、しゃきしゃきとしていないとやはり苦しい。だから娯楽作品バットマンとしても弱いし、バートン色も薄められてしまう。
 バートンとしては、「ビートルジュース」と「シザーハンズ」という2つの代表作の間に撮った作品で、力を抜いたというわけではないだろうが、どうも商業主義的なものに引っ張られてしまったんじゃないかという勘繰りをしてしまう。とことんバートン色を出したらそれはそれで面白い映画になったのかもしれないが、バットマンファンには反感を買うかもしれない。それなりにヒットしたのだから、ある意味では成功なのかもしれないが、純粋に映画としてはなんともという感じがしてしまう、なんとなくバブリーな感じのする映画でした。

スリーピー・ホロー

Sleepy Hollow
1999年,アメリカ,98分
監督:ティム・バートン
原作:ワシントン・アーヴィング
脚本:アンドリュー・ケヴィン・ウォーカー
撮影:エマニュエル・ルベッキ
音楽:ダニー・エルフマン
出演:ジョニー・デップ、クリスティナ・リッチ、ミランダ・リチャードソン、マイケル・ガンボン、キャスパー・ヴァン・ディーン、クリストファー・ウォーケン

 1799年、ニューヨーク。捜査官のイガボット・クレーンは自白の強要ばかりに頼る上司にたてつき、市長に郊外の町スリーピー・ホロー行きを命じられる。その町では3人の人間がたてつづけに首を切り落とされるという連続殺人事件が起こっていたのだ。そしてスリーピー・ホローには南北戦争で数多くの人々を惨殺した「首無し騎士」の幽霊が出るという伝説があったのだ。
 「シザー・ハンズ」「エド・ウッド」に続き3度目のコンビを組んだティム・バートンとジョニー・デップ。ジョニー・デップはバートンの幻想的な世界に本当によく映える。この作品は特に映像面でのティム・バートンの魅力が十全に発揮された作品。ストーリーもなかなか練られていてサスペンスとしても上出来。

 何はともあれ映像がきれい。特に色の使い方が素晴らしい。ティム・バートンといえば、とにかく原色をごたごたと入れ込んでごちゃごちゃした独自の色彩世界を作り出すというイメージがあったけれど、この作品ではモノトーンを非常にうまく使い、いつも通りの極彩色を控えめにして素晴らしい効果があがっている。大まかに言って、風景やロングショットでは色が少なめ、しかも単なるモノトーンでもなく、トーンを落としただけでもない不思議な色合い。セピアがかった画面にほのかに色がかかっている感じ。ロングで撮った森とか、人の顔の淡い色が非常に印象的だった。 それともちろん、リアルな首きり。これだけすっぱりと見事に首を切れる監督はティム・バートンしかいないでしょう。スパッとなスパッと。切り口も見事な出来映え。やはり特殊効果ってのはこういう細部に地味に使わないとね。どでかいCG使って、現実にないものを見せるよりも、現実にあるけど実際に映すのは難しいものをリアルに造る。ここのところをわかっているティム・バートンはやはりB級映画の巨匠。