妖婆・死棺桶の呪い

ВИЙ
1967年,ソ連,78分
監督:ゲオルギー・クロパチェフ
原作:ニコライ・ゴーゴリ
脚本:ゲオルギー・クロパチェフ、アレクサンドル・プトゥシコ、コンスタンチン・エルショフ
撮影:フォードル・プロヴォーロフ、ウラジミール・ピシチャリニコフ
音楽:K・ハチャトリアン
出演:レオニード・クラヴレフ、ナタリーヤ・ワルレイ、ニコライ・クトゥーゾフ

 ロシアの新学校の学生3人が学校が休みの期間荒野を旅する。道に迷い、野宿を覚悟した彼らの前に現れた怪しげな農家。そこにいたのは一人の老婆だった。怪しみながらも他に家もなく、そこに泊まることにした彼らだったが、その夜老婆が神学生の一人ホマーに迫ってきた。
 奇想天外なソ連時代の怪奇映画。いわゆるソ連B級SF作品のひとつ。原作はゴーゴリとなっているが、果たしてどれくらい原作に忠実なのか…

 見ている間も、見終わってからも頭にはずっと?が出続ける。果たして何個の?が頭に浮かんだだろうか。ひとつ明らかなのは、この映画は限りなくB級であるということ。冒頭から背景があっさりと書割で、とてもそれをリアルに見せようとしているとは思えない。書割になったり、実景になったりするその変化がさらに書割の安っぽさを強調する。しかも、時間の描き方がかなり適当で、朝なんだか昼なんだか夜なんかよくわからないまま、時間だけはたっているようなのだ。
 そして特撮は駆使されるが、その稚拙さは言うまでもない。おそらく、ハリウッド映画なら1カットに使われるであろう予算くらいで1本の映画を作ってしまったという感じ。しかし、この極彩色の不思議な特撮空間は魅力的でもある。かなりコアなB級映画ファンはこのあたりの作りはたまらないものがあるでしょう。私は生半可なB級映画ファンなので、ちょっとつらかったですね。同じソ連のSF映画といえば『不思議惑星キン・ザ・ザ』を思い出しますが、あの作品ほどの圧倒的なばかばかしさがこの映画には欠けている。そのように思います。マニアックに見ることはできるけれど、普通の見方をする観客を引き込むことはできない。そんな映画だと思います。
 ところで、原作はゴーゴリらしく、原作となっている『ヴィー』は読んだことないんですが、きっとこんな話ではないと思います。この映画でも「ヴィー」と呼ばれる妖怪のようなものが出てくるんですが、それは一瞬。たいした役回りもない。どうなってんの?

弾丸特急ジェット・バス

The Big Bus
1976年,アメリカ,88分
監督:ジェームズ・フローリー
脚本:フレッド・フリーマン、ローレンス・J・コーエン
撮影:ハリー・ストラドリング・Jr
音楽:デヴィッド・シャイア
出演:ジョセフ・ボローニャス、トッカード・チャニング、ネッド・ビーティ、ルネ・オーベルジョノワ

 キティ・バクスターが設計した初の原子力バス・サイクロプスが運行しようというときキティの父カーツ博士のいるサイクロプスの研究所で爆弾騒ぎがあり、2人の操縦士が負傷してしまう。代わりの操縦士としてカーツ博士はキティの元婚約者ダンを指名した。
 最初のナレーションで、様々なパニック・ムーヴィーの一つとして紹介されるこの映画だが、実際はパニック映画の完全なパロディ。
 つまりこの映画はドタバタB級な笑い連発のアクション・SF・パニック・コメディ(何じゃそのジャンル)

 最初のほうはB級な笑いのセンスがなかなかよくて、「もしかしてこれは!」と思わせるのだけれど、結局そのままだらだらと最後までいってしまうので、並みのB級コメディという感じになってしまった。何より設定の部分がテキトーすぎる。爆弾がことごとく意味がないとか、結局石油王の仲間達は何にもしていないとか、その部分もパロディなのだろうけれど、設定の部分までパロってしまうと、何がなんだか脈絡がなくなってしまう。ある意味では「オースティン・パワーズ」に似た感じの設定の作品だが、こう見ると「オースティン・パワーズ」ってのはなかなか優秀なパロディなんだと思ってしまう。
 意外と面白いところがあったのに、それが全体に生きなかったのが残念。バスのじゃまをする親分みたいな人がもっと表面に出てきて対決構造が明らかになったらよかったのに。字幕にはでてなかったですが、なんかおじいさんがタイタニックを沈めた見たいなことを言っていたので、そのあたりの設定は意外と深そうなだけに残念。

ソルジャー

Soldier
1998年,アメリカ,98分
監督:ポール・アンダーソン
脚本:デヴィッド・ウェッブ・ピープルズ
撮影:デヴィッド・タッターサル
音楽:ジョエル・マクニーリイ
出演:カート・ラッセル、ジェイソン・スコット・リー、ジェイソン・アイザック、コニー・ニールセン

 1996年、生まれたばかりの赤ん坊を兵士として英才教育するプロジェクトが始まった。戦争を友達と説き、脱落者は容赦なく殺す。そんな教育で育った兵士たちは続く戦乱の世の中で活躍していた。しかし40年後、新たに遺伝子操作によってより優秀なソルジャーが開発された。旧ソルジャーのリーダートッドは新ソルジャーによって殺され、廃棄物の星に捨てられる。しかしトッドは生きており、そこには難破船に乗っていた人々が住んでいた…
 近未来の恐怖を描いたオーソドックスありがちなSF映画。B級映画だと思えば十分見られるくらいの作品。結構いい出来かな?

 まあまあ、筋はとってもわかりやすく、次の展開が読める読めるという感じ。撮り方もかなりオーソドックスで、見せたいシーンはスローモーション。はるかに協力なはずの新ソルジャーは思ったとおり弱いし、すべての複線が何らかの結果に結びつくし… でも、そんなわかりやすさがB級映画らしいよさのなのでしょう。といっても、なかなかわかってもらえないとは思いますが…
 この映画を仮に普通の映画として捉えたとしたら、いいところは一点。徹底してソルジャーが無表情なところ。設定上当然なんだけれど、そこは人情ついついラストシーンくらい人間らしさを取り戻して、笑わせてみたいもの。そこをじっと我慢して、最期までクスリともさせない。そこがよかったですね。
 あとはB級的な楽しみです。しかも並みのB級映画。