冒険者たち
Les Aventuriers
1967年,フランス,110分
監督:ロベール・アンリコ
原作:ジョゼ・ジョヴァンニ
脚本:ロベール・アンリコ、ジョゼ・ジョヴァンニ、ピエール・ペリグリ
撮影:ジャン・ボフェティ
音楽:フランソワ・ド・ルーべ
出演:アラン・ドロン、リノ・ヴァンチュラ、ジョアンナ・シムカス
飛行機乗りのマヌーとレーシングカーに熱中するローラン。2人は大の親友で、いつもローランの家のガレージに入り浸る。マヌーは頼まれた仕事で凱旋門を飛行機でくぐるという計画を立てていたが、失敗し免許停止に。ローランも開発していた車が爆発し無一文になってしまった。そんな2人にコンゴの近海に宝が沈んでいるという話が転がり込んで…
2人の男とひとりの女。そんなフランス映画にありがちな設定ながら、とても繊細で爽やかなドラマ。とてもソフトないい雰囲気を持つ映画。
フランス映画はかくありなむ。ちょっとまえまでフランス映画といえばこんな感じでした。美男美女に海に水着に… そしてこの映画はそんなフランス映画らしいフランス映画としての完成度は高い。2人の男とひとりの女の関係を描くという、ある意味古典的な題材をプロットの中心には据えずにさらりと描く。本当はそれこそが映画の最大のテーマであるかもしれないけれど、あくまで控えめにという姿勢がいい。その抑えた感じがハリウッドと比較したときのフランス映画のイメージなのかもしれません。
それにしても、映画にフランスらしさがあるというのは不思議なこと、同じように日本映画らしさとかハリウッド映画らしさとかイラン映画らしさとかがある。そのことは前々から疑問でした。この監督だって「よし!フランス映画らしい映画を撮るぞ!」と決めて映画を撮っているわけではないはず。意識しなくてもそういう映画になってしまう。逆にフランスでハリウッド映画っぽい映画を撮ろうとしたら「ハリウッド映画っぽく撮るぞ!」と決めないと撮れないような気がする。この映画の「国民性」というのはすごく不思議です。憶測では各国の映画製作のシステムが影響を与えているのでしょう。インディペンデントで作られた映画のレベルでは製作国による違いはそれほど明確ではない気がします。あるいはインディーズ系と呼ばれる監督達はそのレベルを超えようとしています。アキ・カウリスマキの映画は「日本映画」のジャンルに入ると誰かがどこかで言っていましたが、そういうようなこと。ジム・ジャームッシュだってアメリカ映画ではないと思う。しかし、そうして「国民性」のレベルを超えようとしているということは逆にまだ超えるべき境界が存在することを意味し、どこからそんなものが生まれるのかという疑問は解明されないのです。
今日もまた話がすっかりそれてしまいましたが、これはなかなか興味深い問題だと思いませんか?
さて、映画に話を戻しますがこの映画「冒険者たち」という題名のわりには、映画に起伏が少ない。比較的淡々と物語りは進み、いくつかの山場はあってもたたみかけるような勢いはない。といってもそれが悪いといっているわけではなくて、うららかな午後のひと時に何人かで紅茶でも飲みながら見たりするのには適していると思います。しかし、それは絶対にこの映画でなければいけないというのではなくて、そんなシチュエーションに適した一本でしかない。その「弱さ」が気になります。しかし、しかし、そういう映画も必要で、そういう映画をストックしておけば、たとえば気分に適したCDをかけるように、気分に合わせて映画を見るということができたりします。頭の中に入れておいて、友達がきたときにレンタルビデオ屋で借りてきたりするといいでしょう。
それが「映画を日常に」ということ。かな。