翼のない天使

Wide Awake
1998年,アメリカ,87分
監督:M・ナイト・シャマラン
脚本:M・ナイト・シャマラン
撮影:アダム・ホレンダー
音楽:エドマンド・チョイ
出演:ジョセフ・クロス、ロージー・オドネル、デニス・リアリー、ティモシー・レイフシナイダー、ダナ・デラニー

 カトリックの学校に通う少年ジョシュアにひとつの死が訪れる。大好きな「じじ」が死んでしまった。ジョシュアはショックを受け、「じじ」が大丈夫かどうか聞くために神様と話したいと思うようになる。その神様探しの中で成長して行く少年の姿を描いた感動作。
 「シックス・センス」の監督M・ナイト・シャラマンのメジャー・デビュー作。「スチュアート・リトル」の脚本も書いているこの監督は、子供向けというか、児童作品が専門なのだろうか? この映画も、日本で言うところの文部省指定作品という感じ。ファミリー向けにはなかなかいい作品だと思います。 

 少年が、「死」にショックを受けて「神様」を探し始める。そのことで彼はさまざまなことに気づき始め、人間的に成長して行く。
 あらすじを書くと、まさにに教科書に出てきそうなお話。映画を見てもその通り。生ぬるいというか、気恥ずかしいというか、かなりよくできてはいるんだけれど、どうもなじめない。
 特に驚くべきところもなく、プロットに目を見張るところもない。主人公のジョシュア・ビールを演じるジョセフ・クロスはなかなかいい演技。可もなく不可もなく、無難な映画という感想でした。
 しかし、ラストは…。「なるほど」と思えないこともないんだけれど、そんな結末にするんだったら、もっと伏線をいっぱい張って、「オー!」と納得できるようなシナリオにしないと厳しいのではないでしょうか。

スターシップ・トゥルーパーズ

Starship Troopers
1997年,アメリカ,128分
監督:ポール・ヴァーホーヴェン
原作:ロバート・A・ハインライン
脚本:エド・ニューマイヤー
撮影:ヨスト・ヴァカーノ
音楽:ベイジル・ポールドゥリス
出演:キャスパー・ヴァン・ディーン、ディナ・メイヤー、デニース・リチャーズ、ジェイク・ビューシイ、ニール・パトリック・ハリス

 地球は銀河系の反対側クレンダス星に住む昆虫が進化した宇宙人バグズの攻撃を受けていた。そんな頃、ブエノスアイレスで高校生活を送っていたジョニー・リコと恋人のカルメン、友人で超能力を持つポールの三人はともに軍隊に入った。3人がそれぞれ軍隊で別の道を歩み始めた頃、地球はバグズとの全面戦争に突入した。
 ロバート・A・ハーラインの1959年の小説の映画化。とにかく単純明快。人間と虫の殺し合い、涙あり感動あり笑いあり、大スペクタクル・スペース・ドラマ。
 とても痛快、素晴らしい作品だと思うが、見ようによってはひどい映画とも言える。特に、残虐シーンが多いので生理的に受け付けないという人は要注意。 

 とにかく、なにもかもがわかりやすい。何せ、相手が昆虫だからね。殺すのに躊躇がいらない(昆虫好きには怒られるか)。そして、権威主義も恋愛も、すべてがもう教科書どおりに描かれている。わかっちゃいるけど熱くなってしまうんだよね。そして、エイリアン的なスリルあり、友情あり、なのですよ。
 さらに面白いのは、人がちぎられたり、虐殺された後の光景だったりといった残虐なはずのシーンがすべて作りものくさいところ。リアルであるような気もするんだけれど、やっぱり作りものなんですね。これはわざとでしょうねやはり。あんなに人形じみた死人を置く必要はないですから。そして、連邦軍のコマーシャル。あのわざとらしい作り方がなんともいえない。これが、ヴァーホーヴェンの反戦の訴えだとは言わないけれど、さまざまな物事を皮肉ったヴァーホーヴェンなりのメッセージであることは確かでしょう。
 ヴァーホーヴェンという監督は何だか、こういう妙な才能がありますね。ヴァーホーヴェンといえば、「トータル・リコール」に「ロボ・コップ」ただの娯楽SFのようでいて、裏になにかにおう。この映画もまたそんな作品でした。 

ラウンダーズ

Rounders
1998年,アメリカ,121分
監督:ジョン・ダール
脚本:デヴィッド・レヴィエン、ブライアン・コッペルマン
撮影:ジャン=イヴ・エスコフィエ
音楽:クリストファー・ヤング
出演:マット・デイモン、エドワード・ノートン、ジョン・タトゥーロ、ファムケ・ヤンセン、ジョン・マルコヴィッチ

 ポーカーで学費を稼ぐロースクールの学生マイク(マット・デイモン)は有り金すべての3万ドルを用意して、勝負に臨むがあえなくすってしまう。マイクはポーカーを止めることを決意し、配送のアルバイトに精を出す。しかし、そんな時、昔のギャンブル仲間ワーム(エドワード・ノートン)が刑務所から出所してくる。
 マット・デイモンはギャンブルをしていてもまじめ青年。ストーリ自体もなかなか面白いが、脇役に個性的な役者がそろっているのが楽しい。恋愛はほんの飾り物にすぎない「男」の映画。

 なんと言っても、エドワード・ノートン演じるワームのバカっぷりがすごい。そしてマイクのお人よしっぷりが。いくらなんでもここまでバカなやつもいないだろというくらいバカを繰り返すワームに、なぜかいつまでもやさしく振舞うマイク。その関係性が映画を面白くしているのだろう。そのあたりが作り手は巧妙だ。マイクのモノローグを織り交ぜることで、観客をマイクの側に立たせる(必ずしもマイク自身に自己投影させるわけではない)。それで観客はワームのことが腹立たしくて仕方がなくなるわけだ。そしてさらに、マイクがワームをかばう気持ちもわかるというようにさせる。それで、KGBに立ち向かう準備は整ったというわけだ。余計な恋愛話もなくなったし、あとは男と男の一騎打ち。これはつまり、現代版の凝った作りの西部劇なのですね。クライマックスは一対一のガチンコ勝負。ずるはなし、脅しもなし。 

グット・モーニング・ベトナム

Good Morning, Vietnam
1987年,アメリカ,120分
監督:バリー・レヴィンソン
脚本:ミッチ・マコーウィッツ
撮影:ピーター・ソーヴァ
音楽:アレックス・ノース
出演:ロビン・ウィリアムズ、フォレスト・ウィテカー、チンタラー・スカパット、ブルーノ・カービイ

 ベトナム、米軍放送の人気DJエイドリアン・クロナウアーから見たベトナム戦争を描いた社会派コメディ。スタンダップ・コメディアン、ロビン・ウィリアムズの本領発揮、喋って喋って喋りまくるマシンガン・トークが面白い。
 しかし、やはりベトナム戦争もの、決して明るいだけでは終わらない、DJではあっても彼も兵士、戦争を避けて通ることはできない。『プラトーン』『ハンバーガー・ヒル』といった「まっとう」なベトナム映画と見比べてみると面白いかもしれません。
 準主役、クロナウアーの相棒ガーリック役のフォレスト・ウィテカーもいい味出してます。 

 久しぶりに、何回目かにこの映画を見て、「この映画が私にとってのロビン・ウィリアムスの原点だ」と気づいた。ロビン・ウィリアムスのほかの映画を見るときにも、いつもこの映画の残像が目の前のスクリーンに投射されていたのだと。簡単に言えば、ロビン・ウィリアムスらしさが凝縮された映画。表情や、動きや。映画全体を包み込む雰囲気とか、これがロビン・ウィリアムス「の」映画。確かに、フォレスト・ウィテカーなしでは成立しないんだけれど、どう見ても、ロビン・ウィリアムスの映画。
 この映画の中でもっともそれが出ているのは、前線に向かう兵士たちのトラックが立ち往生しているところで、ガーリックに促されて、クロナウアーがトークをする場面。話している場面から兵士たちが去っていく場面までのロビン・ウィリアムスの表情を見ているだけで、映画が成り立ってしまう。もちろん、兵士が去っていくところでの、2つの固定アングルの切り返しという映像技術も重要なのだろうけれど、見る側の印象に残るのは、トラックの荷台の格子越しに見えるロビン・ウィリアムスの表情だ。 

ペイ・バック

Payback
1999年,アメリカ,101分
監督:ブライアン・ヘルゲランド
原作:リチャード・スターク
脚本:ブライアン・ヘルゲランド、テリー・ヘイズ
撮影:エリクソン・コア
音楽:クリス・ボードマン
出演:メル・ギブソン、グレッグ・ヘンリー、マリア・ベロー、デヴィッド・ペイマー

 一匹狼の泥棒ポーターは、ヴァルと組んでチャイニーズ・マフィアから13万ドルを強奪。しかし、ヴァルの裏切りにあって分け前の7万ドルを奪われる。ポーターは7万を奪い返すためヴァルとヴァルの所属する組織に戦いを挑むのだった。
 メル・ギブソンがクールなタフ・ガイを演じる、徹底的に暴力的なアクション映画。ブライアン・ヘルゲランドは「L.A.コンフィデンシャル」でアカデミー脚色賞も受賞している脚本家だが、監督はこの作品がはじめて。
 全体にブルーの色調がかかった映像もクールな、まさに男の映画。そこらの暗澹としていてどろどろしているマフィア映画とは違うクールさある。 

 ブルーのフィルターを通したと思われる青みがかった映像がこの映画の全体の雰囲気をうまく作っている。やはりマフィアものなので、全体が暗い画面で構成されているのだけれど、この青さのおかげで重い印象はない。カメラマンのエリクソン・コアはメインでは3作目ということで、はっきり言ってほとんど無名のカメラマンだが、オーソドックスながらなかなか気の効いた映像を作っていると思う。
 プロットもなかなかよくできている。ヘルゲランドの脚本家としての実力が発揮されているという感じ。
 ヒロイン役には「ER」でアンナ・デル・アミコ役を演じていたマリア・ベローが抜擢されている。最近のアメリカの傾向はテレビで活躍した役者がハリウッドへ進出するというものであるようだ。いま日本で公開されている映画には「ビバ・ヒル」出身者が出てるものがたくさんあるし。
 この映画は、どこをとっても平均点をクリアしているというバランスのいい映画。

6デイズ/7ナイツ

Six Days Seven Nights
1998年,アメリカ,101分
監督:アイヴァン・ライトマン
脚本:マイケル・ブラウニング
撮影:マイケル・チャップマン
音楽:ランディ・エデルマン
出演:ハリソン・フォード、アン・ヘッシュ、デヴィッド・シュワイマー、ジャクリーン・オブラドーズ

 ニューヨークで、ファッション雑誌の副編集長をしているロビンは恋人フランクと南の島へヴァカンスへ。そこでフランクに求婚され、楽しい休暇を送っていた。しかし、そんなときロビンのところに急な仕事が。ロビンは渋々セスナのパイロットのクインに頼んで、仕事先へ向かうのだが、悪天候でセスナ機は無人島に不時着してしまう。
 南の島を舞台にしたラブ・ストーリー。ハリソン・フォードとしては得意のアドヴェンチャーもの。南の島の景色がとてもいい。ああ、絶景かな。 

 物語は、ハーレークイン・ロマンスのよう。無人島に二人きり。海賊まで出てきて、果ては男のほうはエキゾチック美女の誘惑に屈し…。
 これは、ハリソン・フォードとアン・ヘッシュのための映画なのですね。私はアン・ヘッシュとグイネス・パルトロウとキャメロン・ディアスの区別がいまいちつかないんですが、それでも、映画一本作るくらいの魅力的な女優さんであることはわかります。かたや、ハリソン・フォードのほうは肌にはりがなくなっていて、少し悲しかった。
 ひとつこの映画の特徴を挙げると、上からの画が多いこと。それはただただ南の島の絶景を映したいからとしか私には思えません。絶景は確かに美しく、この映画で唯一(アン・ヘッシュのかわいさも数えると唯二つ)のよい点だと思いますが、逆にこの非現実的な視点の多様が映画のリアリティをさらにそいでいるような気もします。
 このような映画を臆面もなく作ってしまうようじゃ、ハリウッド映画もやはり斜陽なんでしょうかね。

リーサルウェポン4

Lethal Weapon 4
1998年,アメリカ,128分
監督:リチャード・ドナー
脚本:チャニング・ギブソン
撮影:アンジェイ・バートコウィアク
音楽:マイケル・ケイメン、エリック・クラプトン、デヴィッド・サンボーン
出演:メル・ギブソン、ダニー・グローヴァー、ジョー・ペシ、レネ・ルッソ、クリス・ロック、ジェット・リー

 リーサル・ウェポンシリーズも4作目。今回はチャイニーズ・マフィアが相手。
 LAPD(ロス市警)の壊し屋コンビ、リッグスとマートフが私立探偵のリノと一緒にマートフのクルーザーで釣りをしていると、近くの船で銃声が。その船に乗り込み、銃撃戦の末、港に曳航すると、戦争にはたくさんの中国人密航者が押し込まれていた。
 そこから、チャイニーズ・マフィアが絡んできていつものようにアクションの連続。銃撃と爆破で痛快。今回はジェット・リーも登場し、楽しみもりだくさん。いつものように笑いもしっかり仕込まれている。 

 個人的にリーサル・ウェポンシリーズは好きです。しかし、3で少しパワーダウンしたので、あまり期待せずに見ました。しかし、クリス・ロックとジェット・リーという新メンバーが効いたのかかなりの痛快作。メル・ギブソンもダニー・グローヴァーももう歳ですが、それをネタにして作ってしまうところが、このトリオ(上の二人+リチャード・ドナー)のすごいところ。
 なんと言っても、本筋とはまったく関係ない最初の爆破シーンにこの映画のすべてが込められているでしょう。ただ笑いをとって、銃撃戦して、豪勢に爆破したい。それがこの映画の目的なのです。だから面白い。ヒューマニズムとか、恋愛だとか、そういったものは観客へのサービス。
 まさしく、優秀なハリウッド娯楽アクション映画ですね。こんな映画を作れるうちはハリウッドもまだまだ健在というところでしょうか。

親指タイタニック

Thumbtanic
1999年,アメリカ,26分
監督:スティーブ・オーデカーク
脚本:スティーブ・オーデカーク
撮影:マイク・デブレッツ
音楽:レイチェル・ポートマン
出演:スティーブ・オーデカーク、メアリー・ジョー・ケフナン、ポール・グリーンバーグ

 1912年、親指史上最大の豪華客船サムタニック号の処女航海で出会った大富豪の娘ゼラニュームと貧乏画家のジェイク。二人は恋に落ちるが…
 もちろん「タイタニック」のパロディ。すべての登場人物は親指。そこにCGで顔をつけている。とにかくばかばかしさがたまらない。ディテールには非常にこっているが、作りはとことんちゃっちい。それもこだわり。
 「とにかく子供の頃から親指が大好きだった」という、スティーブ・オーデカーク(「エースにおまかせ」「ナッシング・トゥ・ルーズ」など)の親指シリーズ第2弾。
 本当に大爆笑。笑って笑って、本家タイタニックのことなんて忘れなさい。
 テーマ曲も最高! 

 このシリーズのそもそもの起こりは、アメリカで「スター・ウォーズ エピソード1」が公開される前夜、「親指ウォーズ」がテレビで放映されたことに始まる。この番組が話題を呼び、徹夜で並んでいたスター・ウォーズファンのラブ・コールもあって再放送されると人気が爆発。勢いに乗って第2作が作られた。現在でも、アメリカでは、“Thumbersons”などの企画が進行している。
 この作品はとにかくばかばかしい。しかし異常に凝っている。くるくる回るところ、そしてテーマソングが最高!
 スティーブ・オーデカークはそもそもはジム・キャリーといっしょにテレビ番組をやっていた、いわばジム・キャリー・ファミリー。あるいはジム・キャリーのブレーン。したがってばかばかしい笑いはお手の物。得意中の得意というわけ。

親指ウォーズ

Thumb Wars : The Phantom Cuticle
1999年,アメリカ,28分
監督:スティーブ・オーデカーク
脚本:スティーブ・オーデカーク
撮影:マイク・デブレッツ
音楽:ロバート・フォーク
出演:スティーブ・オーデカーク、ロス・スチャーファー、ロブ・ポールセン

 親指共和国は、親指帝国サムパイアに侵略される。共和国の残党はアホヤ姫を中心に反乱軍を組織し抵抗するがアホヤ姫はサムパイアに捕らえられてしまう。それを救うべく闘う親指フォースの使い手達の活躍…
 もちろん「スターウォーズ」のパロディ。「エピソード1」の公開前日に初放映され爆発的に話題になった作品。
 とにかく、精緻な作りが素晴らしい。笑いとしては「親指タイタニック」より弱い気がするが、マニア度はこちらのほうが上。なんと言っても、ウービー=ドゥービー=スクービー=ドゥービー・ベノービーが最高。

 この作品はとにかくばかばかしい。しかし異常に凝っている。「スター・ウォーズ」に忠実である点もすごいけれど、あくまで指にこだわるところが恐ろしい。C3POやR2D2(名前は違ったけど)までが親指とはね。じっくりと英語を聞いてみると、字幕とはまた違う味わいが。字幕をつける人も「スターウォーズ」の字幕にあわせるのが大変だったのでしょう。ブラック・ヘルメット・マンがダーク・ベーダーというのはどうかな、という気もしますが、アホヤ姫とはなかなか。
 スティーブ・オーデカークはそもそもはジム・キャリーといっしょにテレビ番組をやっていた、いわばジム・キャリー・ファミリー。あるいはジム・キャリーのブレーン。したがってばかばかしい笑いはお手の物。得意中の得意というわけ。

奇蹟の輝き

What Dreams May Come
1998年,アメリカ,114分
監督:ヴィンセント・ウォード
原作:リチャード・マシスン
脚本:ロン・バス
撮影:エドゥアルド・セラ
音楽:マイケル・ケイメン
出演:ロビン・ウィリアムス、アナベラ・シオラ、マックス・フォン・シドー、ロザリンド・チャオ、キューバ・グッディング・Jr

 クリス(ロビン・ウィリアムス)は二人の息子を交通事故で失った4年後、自身も交通事故に遭い、最愛の妻アニーを残して天国へと召された。天国はまさに楽園だったが、一人残されたアニーは苦しんでいた…
 死後の世界での話を中心にしながら、回想シーンを織り交ぜて物語を組み立てたファンタジー。死後の世界の幻想的な映像には目を見張るものがある。

 これは、物語の作り方としては失敗していると思う。死後の世界では何でもありうるということが言われていながら、さまざまな危機や出会いや感動があっても、まったく実感としては伝わってこない。「天国なんだから当たり前じゃん」と言ってしまえばすべては済んでしまうわけ。展開もだらだらとしていてまどろっこしいし。それに、どうしてもこの映画の世界観になじめなかった。まず死者の意思が(天国に行く場合に限るのだろうけれど)あまりに自由すぎる。インカーネーションするかどうかも自分で選べるとなると、少し無理が出てくる。しかもこの映画からすると、前世の記憶が残っていそうだし。途中まではダンテの「神曲」っぽい話なのかな、と思ったのだけれど、少々死後の世界の組み立て方がお粗末すぎたかなという感じ。生前のエピソードと死後のエピソードとのバランスもどうも落ち着かないし。
 この映画でいい点は映像でしょう。特に地獄が。ボートに迫ってくる少年たちとか、浜辺に打ち上げられている人とか、頭だけを地上に出して埋められている人々とか、かなりスリリングな映像でよかったのではないでしょうか。