1999年,日本,92分
監督:中江裕司
脚本:中江素子
撮影:高間賢治
音楽:磯田健一郎
出演:西田尚美、村上淳、平良とみ、登川誠仁、平良進
しばらく東京で働いていた奈々子(西田尚美)は、祖父恵達と祖母ナビィの暮らす島へと帰ってきた。奈々子と同じ船で島にやってきた老紳士(平良進)は戦前に祖母ナビィの恋人であったサンラーであった。
果たしてサンラーとナビィと恵達の間にはどんな物語があったのか?そして、奈々子と同じ船でやってきた大和人(ヤマトンチュ)福之介と奈々子、奈々子の幼馴染のケンジとの関係はどうなるのか?
沖縄の風景をうまく生かした映像と、アレンジされた沖縄音楽が映画の完成度を高めている。平良進、嘉手苅林昌、大城美佐子ら沖縄の名優・大歌手が脇を固め、味わいのある演技を見せている。
大満足。いい画がたくさんあった。たとえば奈々子が自転車でおばを追いかけてゆくところ、ナビィがサンラーの腕をつかんだところで海へパン、何とか商店(名前忘れた)の黄色い建物をローアングルでとって空を抜いたところ、などなど。挿入されるサイレンとも、映画にアクセントを加えるという意味では非常に効果的。そこにつけられた恵達のナレーションも面白い。
物語で言えば、ナビィと恵達の間の心の動きが穏やかながらも味があり、それを映画的に消化できているので良かった。
疑問が残るのは、ひとつは恵達の英語まじりの話し方。あれは役者の登川誠仁さんがもともとあういうしゃべり方だから必然的にそうなったらしいが、沖縄の人たちにとって、あのような喋り方がどういう意味を持つのかが少し気になった。
あとは、ユタが完全に無視されてしまっていること。ユタの言ったことにナビィと奈々子はことごとく歯向かったのだけれど、結局奈々子は子宝に恵まれ、家が滅んでいるようには見えない。これはユタを否定してしまっているということなのだろうか?奈々子が「あの、インチキユタ!」と言う場面があったが、そんなに簡単にユタの聖性を否定してしまっていいのかは疑問が残る。
と、映画的というよりは社会的(政治的)な疑問を呈してみたわけですが、純粋に映画としては文句なし。恵達の「ゲンキ」Tシャツが欲しい。どっかで手に入るのかなぁ?
登川誠仁さんは「沖縄のジミ・ヘン」と呼ばれる三線(サンシン)の名手で、普段から映画どおりの不思議なしゃべり方をするそうです。
今回見て気づいたのは、夕暮れの美しさですね。それもいわゆる夕暮れのオレンジ色の光というのではなくて、単純に昼間が暗くなった感じの光加減。しかし、もともとの色合いがあまりに鮮やかであるために夕暮れ時の少しくすんだ色のほうが魅力的に見えるというような意味での夕暮れの美しさ。空がスチールブルーになり、人や物の輪郭がぼやけるその時間帯がこの映画の最も美しい時間帯。だからこそ奈々子と福の助のラブ・シーンもこの時間に持ってきたのでしょう。
それから、今日WOWOWで見ている限りでは「ゲンキ」Tシャツに気づかなかったのだけれど、それは私が単に見落としただけなのだろうね。オリオンビールTシャツばかりが目に付いてしまった。そんな微妙な編集はしないだろうけれど、もしかしたら著作権関係で編集?などと考えてしまいました。きっと考えすぎ。