オータム・イン・ニューヨーク

Autumn in New York
2000年,アメリカ,107分
監督:ジョアン・チュン
脚本:アリソン・バーネット
撮影:クー・チャンウェイ
音楽:ガブリエル・ヤーレ
出演:リチャード・ギア、ウィノナ・ライダー、ジリアン・ヘネシー、アンソニー・ラパグリ、アシェリー・ストリングフィールド、エレイン・ストリッチ

 枯葉舞う秋のニューヨーク、高級レストランのオーナーでプレイボーイのウィルはまたも恋人との短い付き合いに終止符を打った。その時公園で見かけた美女に自分の店で再会した。ウィルは彼女を口説き落とすが、彼女は思い病気であと1年も生きられない体だった。
 すべてが教科書通りのラブ・ロマンス。ストーリーも先の展開が読め、セリフもクサイし、ああ、べたべた。救いとなるのはウィノナ・ライダーのかわいさか、リチャード・ギアの笑い皺か。あとは映像が澄み渡るようにきれいだったこと。

 すごいです。こんなに潔いハリウッド映画は久しぶりに見ました。いまどきセントラルパークの空撮から入る映画なんてそうはない。そして、最初のシーンで使われているエキストラたちの白々しいこと。
 楽しみといえば、次ぎのシーンがどんなシーンかを予想すること。すべては典型的なラブ・ロマンスの撮り方、つくりかた。二人は思っていることをすべてセリフにしてしゃべる。クライマックスはスローモーション。
 リチャード・ギアはあそこまで行くと病気だとか、忙しいはずの医者がどうしてシャーロットのためにはニューヨークまで飛んでくるのか(クリーブランドの患者はどーすんだ)とか、シャーロットはばあちゃんに思いやりのあるせりふをはきながら、クリスマスはウィルと二人っきりで過ごしている(ばーちゃんは置き去りかい)とか、突っ込んでいけばきりもない。
 監督は「シュウシュウの季節」で監督デビューした女優さんだそうです。カメラは「さらば、我が愛 覇王別姫」で知られる人だそうで、なるほど。という感じ、確かに映像はきれいだった。
 そういえば、コックの奥さんをやっていたシェリー・ストリングフィールドは「ER」でスーザン・ルイスをやっていた人ですよね。それはなんだかうれしかった。ちょっと太ったかな。

2000年,日本,123分
監督:阪本順治
原案:宇野イサム
脚本:阪本順治、宇野イサム
撮影:笠松則通
音楽:coba
出演:藤山直美、豊川悦司、國村隼、牧瀬里穂、内田春菊、佐藤浩市

 昔ながらのクリーニング店で母親といっしょに働く少々アタマの弱い正子と、家を出てスナックで働く妹の由香里。二人はいつも衝突していた。そんなある日、二人の母常子が急死してしまう。その母の通夜の夜、ショックで母の通夜に出席できなかった正子は由香里を殺してしまう。そこから正子の逃亡生活が始まった。
 「どついたるねん」「トカレフ」などで知られる阪本順治監督が藤山直美を主演に撮った笑いに溢れたサスペンス。藤山直美の個性が前面に押し出されていて面白い。

 この映画面白かったのですが、監督の才能というより、出演者たちそしてカメラが素晴らしかった。まあ、それを引き出すのが監督の才能と考えれば阪本順治はすごい監督ということになるのでしょうが、さらっと見てしまうと、藤山直美はいいね。ということになるでしょう。何と言っても役者を見る映画、それぞれの出演者がやはりそれなりにいい個性を出していて、それが混沌とした魅力を編み上げているといった感じでしょうか。物語全編を通して登場する人物が少ないというのも役者の個性を重層的に積み上げる上で非常にいい作り方だと思います。
 もう一ついいのはカメラワーク。映像が斬新だとかいうのではなくて、非常に自然なカメラワーク。ほとんどが人の視線で撮られていて、見る側にまったく違和感を与えない。しかしその裏には相当な苦労があったとうかがわせる。そのようなカメラ。例を二つ上げると、一つは鏡のシーン。おそらく4回か5回鏡が出てきたと思いますが、映画で鏡を使うのは非常に気を使う。とくに、トイレで由香里の幻覚を見るシーン。正子ひとりが映っているところと後にいる由香里が映るところは多分ワンカットで撮られていたと思いますが、そのためには牧瀬里穂が映り込まないようにカメラを移動させなければならないという問題がある。そこがなかなか難しいポイント。もう一つは、由香里が殺されているシーン。かなりのローアングルで、正子の足から横にパンして由香里の死体、再び足を追ってパンして、正子がカメラから遠ざかって全身がカメラに収まる。というなんでもないようでいるけれど、これはかなり計算し尽くされたカメラでしょう。「うまい!」とうなりたくなるところでした。
 という感じです。いい感じの映画ですね。すごく面白いというほどではないけれど、見て損はなかった。

DRUG GARDEN

2000年,日本,89分
監督:広田レオナ
脚本:広田レオナ
音楽:坂井洋一
出演:広田レオナ、吹越満、マーク、クリスティーヌ・ダイコ★、マーガレット、HOSSY

 最初、元ドラッグ常用者のインタビューで始まるこの映画だが、それが終わると雰囲気は一転し、3人のドラァグ・クイーンが登場。
 レオナは夫のフッキー、息子のマーク、3人のドラァグクイーンとシンケンとチル(ともにモデル)と同居生活を送っている。みんなで食べる朝ご飯の席でレイナはパニック・ディスオーダーの発作で倒れてしまった。レオナはトラウマからパニック・ディスオーダーに陥り、8年前から大量の薬を常用しているのだった。
 レオナの物語、ドラァグ・クイーンコンテストを目指す3人、マーク、チル、それぞれの物語が交錯し、みんなの中で何かが変わっていく。
 広田レオナが自らの体験を映画化。シリアスなドラマを斬新な映像で切り取り、ドラァグ・クイーンの笑いの要素をうまくはめ込んだ秀作。

 まず批判。果たして最初と最後のドラッグ常用者のインタビューは必要だったのか? 確かに、これがあればテーマがストレートに伝わるが、そこまで丁寧に説明しなくても、伝わるし、むしろ全体の映画のカラーを乱している印象を受けた。  という点はありますが、全体的にはかなりいい作品でした。この映画ではパニック・ディスオーダーというのは実はそれほど大きなテーマではなくて、むしろドラッグとやはり「人間」一般がテーマになっている。「ドラッグ」の持つ意味や人はなぜドラッグをやるのかということを言葉すくなに語っている。
 かなりさまざまな語り方が出来る映画だが、私が注目したいのは「ドラァグ・クイーン」。この映画に出てきたドラァグ・クイーンは本当に有名なドラァグ・クイーンたちで、本名(ではないか、現実での名前)で映画に出演している。彼ら(彼女ら?)がコンテストに出るというテーマ自体はどうでもよくて(カレンダーにバツをつけて行く映像はかなりいいけれど)、彼らの摩訶不思議な存在がこの映画を成立させている鍵だと思う。これだけ重いテーマを普通の(というとドラァグ・クイーンに失礼か)人たちだけでやってしまうと、深刻になりすぎる。そこにドラァグ・クイーンを入れることで映画全体がファンタジックで面白いものに変わってしまう。それはドラァグ・クイーンがゲイカルチャーの中で演じている役割と同じものであって、それこそがドラァグがドラァグである所以なのだ。
 映像についても語ることが結構ありそうだけれど、別に難解な映像を作り上げているわけではないので、単純に見た感じで「面白い」とか「きれい」だとか言っていればいいような気もする。チルの葬式の場面でひとりひとりを正面から映す過露出の映像はかなりきれいだった。じっと魅入ってしまうような澄んだ美しさだった。他にもサイレント映画風に仕上げたり、フレームを落としてコマ送りのようにしたりとさまざまな工夫が凝らされていて非常によかった。

TAXi2

TAXI2
2000年,フランス,89分
監督:ジェラール・クラヴジック
脚本:リュック・ベッソン
撮影:ジェラール・ステラン
音楽:アル・ケミア
出演:サミー・ナセリ、フレデリック・ディーファンタル、マリオン・コティヤー、エマ・シェーベルイ、ベルナール・ファルシー

 マルセイユの公道でのレース中、トップの車をあおる純白のプジョー406が現れた。運転手はもちろん暴走タクシードライバーのダニエル。産気づいた妊婦を乗せ病院へと急いでいた。無事子供が生まれ、ダニエルは急ぎ恋人リリーのもとへ。
 一方、警察ではマフィア対策の視察にくる日本の防衛庁長官の警護の準備。署長が「コンニショワ~」と怪しい発音で日本語を教える。
 何はともあれ、今回は日本のヤクザが相手。黒塗りの3台の三菱車との対決。日本人にはつぼに入ること請け合いの突込みどころ多数。映画館で見ると、突っ込めなくてストレスがたまります。 

 どうしようもなく笑える。前作を見ていれば、ストーリーは考えなくてもわかる。しかしあまりにばかばかしいギャグセンスがたまらない。とくに日本人には、突っ込まずに入られないボケどころ多数。
・テレビ電話で話すボスの後ろに映っている和服の女の子はなんだ!
・なんで千葉ナンバーなんだ!
・日本語下手すぎるよ!
・あんなばればれなSPいねーよ!
・飛びすぎだよ長官!
などなど、まだまだ突っ込み足りませんが、この辺で勘弁しといたろ。
 とにかく、映画うんぬんよりばかばかしさに笑ってそれでいい。リュック・ベッソンが本当に撮りたい映画ってのはこれのような気がする。でも、立場的にこんな映画は撮れない。巨匠もつらいね。