デュエット
Duets
2000年,アメリカ,112分
監督:ブルース・パルトロー
脚本:ジョン・バイラム
撮影:ポール・サロッシー
音楽:デヴィッド・ニューマン
出演:マリア・ベロ、アンドレ・ブラウアー、ポール・ジアマッティ、ヒューイ・ルイス、グウィネス・パルトロー、スコット・スピードマン、ロックリン・マンロー
警察署で小学校時代の先生が万引きで捕まったところに出くわしたタクシー運転手のビリーは家に帰ると今度は妻が共同経営者と浮気しているところに出くわし、そのまま家を飛び出す。元プロ歌手のロッキーは賭けカラオケをしながら各地を転々としているが、そこに昔かかわった女の死を知らせる電話が。テーマパークの営業マンのトッドは出張先を間違え、家に帰っても妻も子供もお帰りも行ってくれない。
さまざまな理由で旅する人々がカラオケという共通点で結ばれ、その人生がカラオケのチャンピオン大会で交差するというドラマ。グィネス・パルトローと父ブルース・パルトローの最初で最後の共作として話題になった作品。
グィネス・パルトローが主役だと思ってみていたら、ちっともそうではなくて、グウィネス・パルトローとヒューイ・ルイスの組はむしろ脇役で、残りの二組のほうが主役的な役割を果たす。この二組はなかなかうまいつくりになっている。私は特にマリア・ベローとアンドレ・ブラウアーがうまいキャラクターだと思いました。
ただ、6人もの登場人物を主役級として出したことで逆にそいれぞれが薄くなってしまった観もある。マリア・ベロー演じるスージー・ルーミスのキャラクターは彼女自身がでた『コヨーテ・アグリー』などでも描かれ得たアメリカ映画には比較的よく登場するキャラクターで、それを助ける一人の男という設定もわかりやすい。
アンドレ・ブラウアー演じるレジーとトッドの組がこの映画でもっとも秀逸なキャラクター。企業戦争に精神を破壊されてしまうという設定はこれまた映画に珍しい設定ではないけれど、テーマパークの営業マンというのはアメリカ社会を象徴的にあらわすものとしては非情にうまいキャラクターだし、そのトッドを完全にこわしてしまい、旅に出させて、レジーという不思議な相方をあてがい、ロード・ムーヴィーに持っていき、さらにカラオケという小道具を絡ませる。そこにはアメリカ社会への風刺も含まれ、基本的にほとんど白人しか出てこないこの映画の中で異彩を放っている。
わたしとしては欲張って3組の物語を描かずに、このふたりのロードムーヴィーにしてしまったほうが面白い映画になったような気もするけれど。
グウィネスとヒューイ・ルイスの組は客を集めるための客寄せパンダ(表現が古いか…)的な役回りに過ぎず、映画にとっては内容を薄めるものでしかない。ヒューイ・ルイスの歌は確かにうまいし、グウィネスの歌もなかなかのものだけれど、それだけで主役級にするには物足りない。
否定的にいうならば、アメリカの商業至上主義社会を批判するようでいながら、結局その商業主義に積極的に乗っかり、映画自体の面白さを犠牲にしてしまったような映画ということになる。
ただ、逆に言うと、商業主義に無批判に乗っかることでだめになってしまう映画が多い中、それに乗っかりながらそれ自体を風刺するというスタンスを取ったということは評価できるのかもしれない。