グロリア
Gloria
1980年,アメリカ,121分
監督:ジョン・カサヴェテス
脚本:ジョン・カサヴェテス
撮影:フレッド・シュラー
音楽:ビル・コンティ
出演:ジーナ・ローランズ、バック・ヘンリー、ジョン・アダムス、ジュリー・カーメン
マフィアによって惨殺された一家から男の子を託されたグロリアは、マフィアに狙われる子供を見捨てて逃げようとするが、徐々に少年との絆を深め……
リュック・ベッソン監督の「レオン」の原型ともいえることで、再び脚光を浴びたカサヴェテス監督の代表作。ハードボイルドな女主人公グロリアを情感たっぷりに描いた味わい深い作品。少年役のジョン・アダムスも素晴らしい演技を見せている。
「レオン」を見たとき、「あっこれは『グロリア』だ!」と思ったけれど、今、グロリアを見直してみると、「これはレオンとは違う」と思う。何が違うのか?
物語の始まりはほとんど同じ。始めの部分での違い(そしてそれぞれに優れている点)は、レオンではゲーリー・オールドマンがいい味を出していること、グロリアでは電話越しの父と子の対話があること。
「グロリア」は人間の物語だ。映画の全編に人間くささが漂う。登場人物のすべてが人間くさい。最後のほうのシーンでフィルのお金を両替するホテルのじいさんですら人間くさい。クローズアップで表情を捉え、登場人物それぞれの内面からにじみ出るものを捉え、説明せずにただ映す。単調で退屈にすら感じられる映像なのだけれど、なんだか胸騒ぎがする。特にグロリアとフィルの心理の移り変わりが、我々の感情を落ち着かなくさせ、感情移入を容易にさせるのだろう。
「レオン」の場合はもっと安定している。レオンの感情は安定して和らいでいくのがわかる。グロリアのように激しく波打つのではなく、安定した上り坂。それはそれでリュック・ベッソンの世界であって、素晴らしいものであるのだけれど、カサヴェテスの壮絶な世界もまた素晴らしい。