フラワー・アイランド
Flower Island
2001年,韓国,126分
監督:ソン・イルゴン
脚本:ソン・イルゴン
撮影:キム・ミョンジョン
音楽:ノ・ヨンシム
出演:ソ・ジュヒ、イム・ユジン、キム・ヘナ
映画は女性のモノローグから始まる。マチュピチュで神秘の力によって美しい声を得たという話をする。彼女を含めた心にキズを抱えた3人の女性達。その3人の女性達が偶然に出会い、「花島」という南の島に向かって旅をする。
とにかく不思議な雰囲気を持つ映画。映像も、物語も、個々のエピソードもなんだか不思議。監督はこれが長編デビュー作となるソン・イルゴン。何でもカンヌ映画祭の短編コンペで賞をとっているらしい。
不思議不思議。映画は不思議なくらいが面白いのでいいのですが、それにしても不思議。一番不思議なのは多用されるピントをずらした画面。ピントがボケたフレームに人が入ってきてピントがあったり、画面内でピントを送ったり(つまりひとつのものから別のものにピントを動かす)することは他の映画でもよく見るし、この映画でも最終的には何かにピントが合うのだけれど、ピントが合うまでの時間が異常に長い。最初はそのピンぼけ画面に疲れるけれど、人間なんでもなれるもので、その内気にならなくなってくるから不思議。確かにしっかりピントがあってはっきり見えるより、ピントがずれてぼんやりしていた方が美しく見える場合もあり、この映画でもそれを感じさせられはするけれど、ここまでこだわる理由はなんなのかとても不思議。
映像の不思議さはそんなところとしても、物語も不思議。個人的には不思議な話は好きなのですが、残念なのはなんとなくファンタジックな方向に行ってしまったこと。不思議なものを不思議なものとして描くのではなくて、普通に描いているんだけど「よく考えてみると不思議だよね」みたいなものが好き。マジックリアリズムとでも言うようなもの。オクナムが「天使のともだち」といったとき、「天使のともだち?」と思ったけれど、それは特に不思議なことではなく当たり前のことのように流れていく。そんな感じ。そんな感じがもっと続いていればとてもよかったと思います。
しかし、全体を通してみてみれば、なんとなくわけがわかったような気もしてくる。あるいは解釈を立ててみることはできる。ネタばれになってしまうので全部は言いませんが、途中で出てきた時点では理解できなかったシーンたちの始末がついたとき、何かがわかった気がしたのです。その分かってしまった気になってしまうのもあまり居心地がよくない。わけのわからない映画はわけのわからないまま、不思議さを残したままとどまっていてくれた方が気持ちよい。もっと不思議なままで終わってしまうことがたくさんあってもよかった。バスの運転手のようにわけのわからないまま物語から去っていってしまう人ばかりがたくさんいてもよかった。そう思います。